みーちゃん

クラッシュのみーちゃんのレビュー・感想・評価

クラッシュ(1996年製作の映画)
4.5
なんだかんだ言って、一組の夫婦のドラマ、二人の世界に終始しているのが良いと思う。

ホリー・ハンターとロザンナ・アークエットが演じるキャラクターは、それぞれのコスチュームもぴったりでインパクトがあるけど、ジェームズは彼女達に溺れるわけではなく、夫婦のプレイに彩りを添える存在でしかない。という描き方が抜群の知性的バランスだなーと思う。

で、ヴォーン。病院で出会った瞬間、彼はジェームズを好きになっちゃったと思う。ジェームズ・スペイダーの容姿と品の良さがその説得力になっている(クラッシュ・マニア会の人達は皆んな、むさいもん)。

そのコンプレックスは、一緒にタトゥーを入れた日に実を結ぶが、身も心も果てたヴォーンに対し、ジェームズが満たされることはなかった。それが、情事の後の哀れな拗らせヴォーンの、廃車置き場での当て逃げであり、自爆だと思う。ヴォーンは一つのきっかけで、通りすがりの存在でしかなく、ジェームズが彼を超えた(自分の人生に取り込んだ)のだと思う。

「この次はきっと」の意味。最初は「この次は死ぬほどの大事故にしよう」かと思ったが、あの二人は決して破滅的でも馬鹿でもない。だから、あれは「この次は追突する側とされる側を入れ替えよう」というプレイの話じゃないかな。