ひでやん

少女は自転車にのってのひでやんのレビュー・感想・評価

少女は自転車にのって(2012年製作の映画)
4.1
少女の目を通して語られるサウジアラビアという国の実態。

自転車を欲しがる10歳の少女が、優勝賞金が出るコーランの暗唱大会に参加するというシンプルなストーリーだが、そこにある日常描写は見る機会が殆ど無いものだった。

舞台はイスラム教国の中でも戒律が最も厳しいサウジアラビア。一夫多妻が認められる男尊女卑の国で、あらゆる事を禁じられる女性たち。全身を黒い布で覆い、肌を見せてはいけない事は知っていたが、それ以外にある慣習や伝統、厳しい宗教束縛に驚かされた。

世界で唯一、女性が自動車を運転できない国で、自転車にも殆ど乗らない。親族以外の男と一緒にいる事は禁じられ、肌も声も隠さなければいけない。何をするにも決定権は男にあり、女性の立場はあまりにも弱い。

学校、家庭、結婚、仕事、あらゆる場面に抑圧があり、日本では当たり前な事が罪深き行為となる。どんなにオシャレして着飾っても、その姿を男の目には映せない。しかし女性たちは強い。サウジアラビア初の女性監督がメガホンをとり、女性視点で描く女性の姿は凛として美しかった。

主人公の少女ワジダは、自転車という目的に向かって突き進む。自分の力で金を貯め、親に反対されても諦めない姿が気持ち良かった。スニーカーを履き、スカーフも被らず登校するおてんば娘がイスラム教の聖典であるコーランを暗唱。

神に捧げた心か、夢への祈りか。いずれにせよ神は沈黙し、微笑むのは母親なので、戒律へのアンチテーゼに思えた。
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