「ブラインド・デート」
東京国際映画祭コンペティション、アジアンプレミア。
主人公は40代で独身の男。実家で両親と暮らす高校教師。
彼は休みには幼なじみと2人でネットで出会った女性とブラインドデート(出会い系など、相手が分からない上で知り合う)をし、寂しさを紛らわしていた。
そんな彼が知り合った教え子の母親。彼女は刑務所暮らしや警察沙汰を繰り返す夫に振り回され、人生に疲れていた。2人は良い感じになるが、夫が出獄したことで思わぬ展開がおとずれる…ってストーリーを、笑いを織り交ぜながら描く。
あらすじだけ見ると、ちょっと下世話なメロドラマ?と思えるが、とんでもない。
とても上品で穏やかな、切ないのに優しい映画だった。
主人公がとにかくにこりともせず、徹頭徹尾ポーカーフェイス。セリフも極端に少なく、感情を表出しない。
それなのに、ものすごく魅力的。
周囲に正直であろう、なんとか人と繋がりを持とうとする姿勢が、見ている側に伝わってくるからだと思う。
画面上の人物の配置の仕方や、色の使い方がとても新鮮だった。さり気ない音楽も綺麗。
グルジアの言葉もトゲのない、優しい感じのするものだった。
グルジアって場所もよく知らない国だけど、日本と感覚似てるなって思った。年取った両親が40になっても独り身の息子を嘆く(でもその原因は親にもある)場面なんて、シナリオそのまま日本人で置き換えられるくらいだった。
上映後の舞台挨拶で監督は「最初はコメディをつくる予定だったが、途中で止め、人生を描く作品にしようと思った」
「おかしい悲しさ、悲しいおかしさ、みたいなものを描きたかった」ということを言っていて、なるほどと納得。
以下、公式プログラムにあった監督のコメント
「人生のセンチメンタルで笑えて奇妙な側面を描き、笑い飛ばしたいと思って本作を作りました。「バカにする」のではなく「笑う」のです。バカにするのは傲慢で冷淡ですが、笑いがあれば見る者は登場人物に感情移入しやすくなり、彼らが抱える問題を理解しようとするでしょう。」
「グルジアでは戦争や政治的・社会的問題が絶えないにもかかわらず、人々は温かい。私が実感したこの思いを皆さんにも知ってほしい。」
「プラグマティック(実用主義的)で冷酷な今日に、人間関係の温かみこそが役立つと思うからです。」