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トム・アット・ザ・ファームのkのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

僕が君のいない世界でできることは、君の代わりを探すこと。

同性の恋人ギヨームを失ったトムは、ギヨームの葬儀に参加するためにギヨームの実家を訪れる。そこで出会う母親とギヨームの兄フランシスを通して、やがてトムは自分の居場所を感じるようになる、というお話。

暴力的なフランシスに、自分とギヨームとの関係を口止めされながらも、やはり恋人の兄だけあってトムも何かしらの愛情を抱く。フランシスに暴力を振るわれるシーン、フランシスに首を絞められるシーン、森の中でフランシスに追われるシーン、それぞれのシーンで画面がシネスコサイズになるのが見てわかるのだが、これは恐らくトムの感情を表した演出だろう。それらを通して迎えるラスト、あまりに情報量が少ないので一見すると分からないが、母親は間違いなく手紙の内容を読み、そこからある程度のトムとギヨームとの関係を知る。それを踏まえ、トムとフランシスのダンスを思い出し、またその関係性すらも知ることになる。耐えかねた母親は家を出て行く。その一連を察したトムは、フランシスとの関係を清算すべく家から出て行くのだが、ラストカットでは自分の進路を決めかねているようにも見える。トムの心の居場所は、やはりギヨームの実家である「農場」にあったのかもしれない。ギヨームの恋人を装うサラが「農場」にやってきた夜、フランシスの暴力的な一面を見たサラは、トムに帰りたいと告げるが、トムは帰らせないと告げる。はじめ、トムはフランシスに暴力を受けた際に一度車で帰ることを試みるが、フランシスの手によって阻まれる。「帰れない」から「帰らない」へと変化したトムの心境が、ある意味での今作の一番の恐怖かもしれない。
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