イスケ

それでも夜は明けるのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

首を吊られたままの執拗な長回し。
あれはエグい……
奥では穏やかな日常が流れているというコントラストが残酷さをより強調させていた。

たったこのワンシーンだけでも、我々が普通に生きていて一生経験することがなかろう尊厳の奪われ方をしているのに、その後に待っていたのは奴隷同士でやり合わせるという仕打ち。

生きていて最も辛いことの一つは人間としての尊厳を奪われることだろう。
ムゴい罰を受ける側のパッツィーの精神的苦痛が言葉にできるレベルを遥かに超えているのはもちろんのこと、確実に間違っていることを分かっていながら仲間への虐待に加担することは脳みそを犯されているような感覚になるんじゃないか。


ソロモンという人は基本的に仲間を助けようとするヒーロー気質は薄い人だと思う。

パッツィーに「沼に沈めて」と懇願された時にそうしてあげていたら、彼女に鞭を振るうことなんてなかったし、彼女を残して去ることもなかった。

また、ことあるごとに「自由黒人」というワードが出てくるあたり、黒人奴隷と自分は違うと考えているフシもある。

だからこいつも根が良くない人間だなんて言いたいわけではない。
怖いんだもの。ブラピ演じるバスですら白人の立場でありながら怖いと漏らすのだから、人間扱いすらされない奴隷が勇敢であるのは究極的に難しいよ。

ソロモンが吊られた時に、ほとんどの奴隷は見て見ぬふりをしていた。

黒人奴隷の苦悩は、白人からの直接的な鞭だけではなく、生きるために時に同胞を無視をし、時に同胞に鞭を打たねばならないことなんだと、物語を見ていく中で芯まで伝わってきた。


北部へ帰還できるソロモンと、置き去りになるパッツィーのシーンは悲しい。

そして、ムチを打たれた身体と地面に落ちた石鹸があまりに釣り合わなすぎて。
イスケ

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