翼

アバウト・タイム 愛おしい時間についての翼のネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

台風の結婚式でさえ、二人にとってはやり直す必要のない大切な思い出なのだ

と、語りかけてくるようなジャケットが印象的な名画。
タイムトラベルしながら人生の選択を良い方向へと繰り返し続ける男の物語。
ちょっとでもミスがあれば戻り、修正する。人生の危機を乗り越え素晴らしい人生にありつく。あまりにうまくいくので、タイムトラベルを連発するとなにかトンデモナイしっぺ返しがあるのではとハラハラするが、(実際なりかけるが)それも軌道修正できるので損傷はない。主人公が内気でナードでオネストな青年でなければとても羨まし過ぎて(≒ズルくて)見てられないだろう。
似たシチュエーションの映画で言えば、幸せと不幸の質量保存の法則のような『バタフライエフェクト』も併せて観たい。あっちはよほどのバッドエンドだが。(DC版が特に)

最終的には同じ秘密を共有する父との友情の物語が主軸となる。彼の最後のアドバイスとして、「最悪な一日をもう一度繰り返せば平穏の有難さを感じることができる」という教えに沿って過ごす一日は涙なしには観られない。否応無しに琴線に触れる。一番の見どころであった。

全編で流れ続けるピアノが美しく、また短調にも長調にもなりえるコード進行が、明るい方(メジャー)にも暗い方(マイナー)にも転ずる可能性の儚さを暗示しているようで、危うく、それが美しいと感じさせた。
翼