茶一郎

ローン・サバイバーの茶一郎のレビュー・感想・評価

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)
4.0
 痛いのは、面白い。と、これは映画に限ったことだが、アメリカ最強の特殊部隊と言われるネイビー・シールズの隊員4人が断崖絶壁に追い詰められ、「もうこれまで!」と断崖からジャンプ、隊員の体が木に、岩にぶつかって、ゴキッ、バキッと音を立てながら転がり落ちていく美しいシーンには、「痛いイコール面白い」という方程式が成り立ってしまう。
 今作『ローン・サバイバー』は、ネイビー・シールズ史上最大の悲劇と言われるレッド・ウイング作戦を基にした作品。タリバン兵200人に対して、ネイビー・シールズ隊員4人、無線も不調、戦場はタリバンのホームの山岳なので、いくらネイビー・シールズが逃げても、その速度を遥かに超えるスピードで追いかけるタリバン兵。この地獄。

 奇妙なフィルモ・グラフィーのせいが何故か「鬼才」という二つ名が付いたピーター・バーグ監督。過去に監督はFBIのテロとの戦いを描いた『キングダム/見えざる敵』で、同僚をテロによって失ったFBI捜査官と、対テロ攻撃によって祖父を失ったアルカイダの子どもを並行に語ったように、決して一辺倒に「アメリカ万歳!」にならない語り口で地獄の作戦を描いていく。
 おおよそアメリカ映画とは思えない、タリバン兵によりボコボコにされるネイビー・シールズ隊員。上述の断崖からの転落、美しいアフガニスタン山岳地帯をバックに、タリバンの銃弾に倒れる様子、タリバン兵によるヘッドショット、この映画の(不謹慎ながら)面白いところは、全て痛くて、悲惨で、目を覆いたくなるほどの恐怖シーンだった。これらは、実にアメリカ伝統のマッチョ信仰が数の暴力により崩壊していく過程であり、この映画は、驚くべき実話が基にした作品という以上に、崩壊の美の映画として記憶に残っていく。
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茶一郎

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