前三作の集大成の作品でありながら、出来としては中途半端で評価が分かれているのも頷ける。生真面目な子がはっちゃけたときのような堅苦しさがあり、爽快感のあるスパイ活劇映画として見るには、アクションシーンに弱さを感じる上に、雑さが目立つせいかエンタメとしても振り切れていない。特にクライマックスは肩透かし感があり、大ボスのはずのスペクターも、満を持して出たわりには……という印象。
ただ典型的な悪の組織である「スペクター」を現代解釈で真面目にやったというおかしみはあり、変にぶっ飛びすぎてないぶん、逆に面白かったとも言える。ただ、そのぶっ飛び切れなかったところがこの作品の弱さでもあるため、一概に褒めるのも難しいのだが……。
カジノ・ロワイヤルのポーカーシーンや慰めの報酬の横たわる重たさ、スカイフォールの総結集感といった、作品特有の「推し所」が今作は見つけられず、それで評価が下がってしまった。
しかしながら腐ってもボンド映画か、かなり長くやったわりにはあまり退屈しなかったというのが正直なところで、やはりそれはクレイグボンドがわりと好きなのと、今までのシリーズのオマージュの部分は外さなかったからだと思う。
