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思い出のマーニーの一のレビュー・感想・評価

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
3.6
米林宏昌監督作品

物語の舞台を北海道の美しい湿地帯に置き換え、心を閉ざした少女が、金髪の少女マーニーと出会って秘密の友だちになり、体験するひと夏の不思議な出来事を描く

これまた完全初見でしたが、やはり米林作品は素晴らしい
淡々としつつも、この夢見心地のような不思議な世界観にぐいぐいと引き込まれていく

塞ぎ込んでいた主人公の少女が、マーニーとの同性愛を匂わせながらも、一夏の経験によってみるみると表情が明るくなっていく姿をみているだけで、どうしようもなく琴線に触れてくる

美しくありながらどこか不安定なこの世界は、揺れ動く主人公の心情そのもので、センチメンタルな感じも、この年頃では全然おかしな事ではない
そんな主人公の細やかで丁寧な描写を積み重ね、抱える孤独感や繊細で敏感な心理状態が画面からひしひしと感じ取ることが出来る見事な演出

虚実の境界をあいまいにし、夢と現実の錯綜があるので多少複雑ですが、結果的には綺麗に種明かしをしてくれるので全く難解な映画ではないし、もう一度観ることでまた違った視点で楽しめそう

瑞々しいタッチで思春期特有の痛さも脆さもしっかりと人間らしく描かれている故に、主人公少女に嫌悪感を抱く人が多いのも理解は出来ますが、個人的には複雑な環境で育つ彼女をどうか優しい目でみてあげたい

わかりやすくダイナミックなアニメではないので評価が割れているのもわかりますが、美しく豊かな背景で隅々まで作り込まれた描写などを観ると、やはりジブリは別格

一人の少女の成長物語を、丁寧かつ優しく寄り添って描いているとても素敵な作品だった

〈 Rotten Tomatoes 🍅91% 🍿88% 〉
〈 IMDb 7.7 / Metascore 72 / Letterboxd 3.8 〉

2021 自宅鑑賞 No.332
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