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オオカミの家の一のレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.5
ストップモーションアニメを根底から覆すような狂気の大傑作

ヤン・シュヴァンクマイエルとブラザーズ・クエイとルネ・ラルー+初期のデヴィッド・リンチを掛け合わせたような凄まじく映像に迫力のある絵画のようなカルト的クレイアニメーションで、一体我々は何を観せられているのだろうかと言いたくなるほど、様々な破壊を繰り返し常に動き続ける地獄のようなワンカットが、ホラーよりもホラーというただならぬ雰囲気を全編を通して感じさせてくれる中毒性の高い前衛洗脳ムービーになっていて、75 分という短い尺でも驚異的な見応え

とてつもない時間と労力がかかってるのは一目瞭然で、制作過程を想像しただけでゾッとするのだけど、あまりにも鮮烈で混沌としている表現技法はとにかく圧巻で、面白い面白くないというありきたりな映画の枠組みに一切囚われることなく、ヤン・シュヴァンクマイエル作品が可愛く思えてくるほどの狂ったアヴァンギャルドな世界観に圧倒され続け、大人が観ても苦手な人はトラウマになりうるラインのグロテスク
そんな頭がおかしくなるようなおどろおどろしさの中にも、きっちり美やアートを感じさせてくる表現力の豊かさは白眉で、もはや新たなストップモーションアニメのエポックメイキングといっても過言ではない

コロニアディグニタなどのチリの歴史的背景などに詳しくないと正直物語としてはさっぱりわからないし、声も音楽も平面や立体を切り替えながら常に画面を動かし続ける演出も、全て含めて観てるだけで気が狂いそうになるような不協和音と気味の悪さにひたすら襲われるぶっ飛んだ作品なので当然観る人はかなり選ぶのだけど、間違いなく映画史に残る一本だし、良くも悪くも確実に観た人の脳裏に焼き付いて離れない最高で最凶の映画体験を味わえるので一見の価値あり

〈 Rotten Tomatoes 🍅96% 🍿-% 〉
〈 IMDb 7.5 / Metascore 86 / Letterboxd 4.1 〉

2023 劇場鑑賞 No.027
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