こたつむり

ポール・ヴァーホーヴェン トリックのこたつむりのレビュー・感想・評価

4.2
最初からゴメンナサイ!
僕はヴァーホーベン監督を見縊っていました!
70歳を過ぎて制作した作品だから瑞々しい感性など期待できず「嗚呼、監督も過去の人なのか」と嘆くためだけに鑑賞するなんて辛いなあ、なんて勝手に先走っていました。ええ。もう。全部僕の暴走、妄想、病巣であります。監督はいつだって監督!相も変わらず、最高ッス!

本作は、『プロの脚本家が書いた部分は冒頭の4頁のみで、残りの脚本は公募して仕上げた』という実験的な作品でして、小説ならば似たような試みを見たことがありますが、映画では寡聞にして先例を知りません。まあ、たとえ、どこかで誰かが挑戦していたとしても。“ハリウッドで名を馳せた監督が74歳という年齢で実験作に挑む”ということ自体が素晴らしいと思います。

しかもですね。
その実験的な姿勢と本作の経緯がよく解るように前半30分強がドキュメンタリー仕立てになっているんですけどね。もうね。この冒頭30分だけでも観る価値がありますよ。特に創作活動に勤しむ人は必見じゃないでしょうか。色々なヒントが転がっていると思いますよ。

そして、本編は残りの50分強で描かれますが、先にドキュメンタリー部分を見せられているから、どうしても客観的になっちゃんうんですよね。だから、物語に没入する雰囲気じゃないんです。しかも、本編が始まる前に監督自身が「素晴らしい作品が出来た」みたいなことを言っていますからね。作品に対するハードルを監督自身で高くしているんです。うは。挑戦的ですよねえ。

でも、それを難なく吹き飛ばすのが監督であります。短い時間ではありますが、監督の持っているエキスを十二分に味わうことが出来ましたよ。ドキュメンタリー部分で「俺は民主的に作るよ」なんて言っていましたが、完全にヴァーホーベン色でしたよ。

というか。
(一部ネタバレ…?ではないけど、コメント欄へ転記)

まあ、何はともあれ。
監督ファンならば必見。創作活動に勤しむ人たちも必見。実験的な映画を観たい人も必見。それと、オランダ美女のムフフな肢体を楽しみたい人も必見。と、必見だらけの作品です。えへ。まるで監督の回し者のような感想みたいですが。ええ。回し者です。だって監督の大ファンですもの。老いて益々盛んな監督が大好きですもの。次作にも期待してますからね。齢78歳の新作。うー、楽しみ!
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