しゅん

神田川淫乱戦争のしゅんのレビュー・感想・評価

神田川淫乱戦争(1983年製作の映画)
-
笑うしかない。はははは。シックスナインした後で、彼女達は笑いあう。ははははは。尻に花を挿して。メガネをオレンジマーカーで塗って。はは。青、赤、紫。花火。きれいだな。きれいかな? 

黒沢清のデビュー作『神田川淫乱戦争』は、同じアパートで退屈しきってだらしなく生きる女の子二人が、神田川を挟んだ向かいのマンションに近親相姦する母子を見つけ、息子を救うために立ち向かう物語だ。いや、物語ではない。語りは切り刻まれて、川に流されて、あらぬ方向へ進んでいく。そして、どこへ進んでも、満たされることはない。助けにいくことも、妨げることも、闘いもセックスも、すべてが空疎だ。最後、ビルの屋上で性行為がはじまる。柵にもたれながら腰を振っていると、柵が落ちて、空が広がって、二人が落ちる。なにもない空間に落ちていくしかない。酒瓶も、ライターも、放り投げても何の音も返ってこない。虚空に吸い込まれるから。虚無に対して、映画への愛だけを頼りにどこまで笑い続けられるか。その戦争としての60分。もちろん我々も、笑うしかない。
しゅん

しゅん