松原慶太

ソロモンの偽証 前篇・事件の松原慶太のレビュー・感想・評価

3.5
宮部みゆきの文庫本6冊の大作を「八月の蝉」の成島出監督が映画化。前編で2時間、後編で2時間半。これは力作ではないでしょうか。

クリスマスイブの夜に中学校の屋上から同級生が転落死。前編では、その死の真相を巡って、余波がさざなみのように拡がっていくようすを描いています。

日本的といえばあまりにも日本的な、静かで閉ざされた、中学校という日常生活。そこに殺人という異物がほうりこまれたらどうなるか。

担任の先生の頼りない狼狽ぶり。善意に満ちてはいるが小心者の校長は結果的に事件を隠蔽するような行動に走る。同級生たちの疑心暗鬼。転落は殺人だったという匿名の告発文。

後編では、この事件の真相をめぐり、校内裁判というフィクショナルな展開が待っているのですが、それを嘘くさく見せないように、前編ではていねいにディテールと伏線を積み重ねています。
松原慶太

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