てっちゃん

インヒアレント・ヴァイスのてっちゃんのレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
3.7
PTA!PTA!
ということでPTA作品です。

ホアキンフェニックスさんとのタッグでぶち上がった前作"ザ・マスター"に続いての本作。

さて本作。
どこから書いていけばいいのかなと思うくらいに感想を述べるのが難しい部類のやつ。
時間が全くないってのもあるけど、本作を観るだけで1週間くらい掛かった。

作品自体が長いってのもあるんだけど、なんだか集中して観るのには疲れるし、集中力が持続しないというか、、そんな感じ。

だけども面白くないわけではもちろんなく、笑えるし、かっこいいし、複雑で意味わからなくなってくるけどそれが心地よい感じ。
それは話が途切れ途切れというか、繋がっていかないというか、、、ようするにあまり意味が分からないから、ちょっとずつ観ていくのが、自分には合ったのもあるんでしょう。

私は全く存じ上げませんでしたが、トマス・ピンチョンさんという作家さんの原作があり、それをPTAさんが映画化を熱望して実現したのだとか。
もともとの原作が非常に難解で、複雑なお話しみたいなので、本作もこれを受け継いだのでしょう。

ここに本作を観るにあたって主演を務めたホアキン・フェニックスさんの御言葉を、

「物語を理解するのではなく、物語の中に巻き込まれて、混乱すること」
「原作を読み終えてから脚本を読んだんだ。その後2回目を読もうとしたんだけど、途中でこれはあまり知りたくないな、と思ってしまった。何が起こっているのか知るんじゃなくて、混乱したかったんだ」

と語っている。

まさにそう!私の思っていたことはそれだ!!ってことを語ってくれた。
本作は頭でっかちになって、なんだこれ?全然分かんねえよ、、って観るのが、面白くてそれを狙って作られたのだと思う。
なので全く意味の分からんことは分かったけど、その先を書けよ!と思われるかもしれないが、それ以上がない作品だから、書きようがないのだ(理解できるほどの頭を持っていないので、それらしい理由です)。

それでも視覚的や聴覚的に分かることを。
PTA監督さんは、音楽を非常に効果的に、且つ印象的に、さらにはかっこよく使うのに非常に長けているなと感じているけど、本作でももちろんそこは絶好調にみせてくれています。

あと、いちいちかっこいいショットの連続には嬉しくなってしまう。
今、自分はPTA作品を観ているのだ!という高揚感に包まれる。

そこにヒッピーに扮するホアキン・フェニックスさんのクレイジーな演技。
彼がさらに物語を混乱へと導いてくれるのは、間違いないでしょう。
キャサリン・ウォーターストンさんのどこか悲観的な演技も流石ですよね。
ジョシュ・ブローリンさんも、圧倒的な威圧感とどこか温かみがある感じ、良いですね。

最後の描写が実に素晴らしい。
過去をしっかりと受け止めつつも、明らかに変わったとしても、それが壊れていていようと、生きていく姿が実に気持ち良く前向きに描かれている。

鑑賞後の、不思議な高揚感はこれが正体だったんだな、と書いていて思いました。
PTA作品でも、異質な部類に入る作品ではないでしょうか。
てっちゃん

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