エディ

リスボンに誘われてのエディのレビュー・感想・評価

リスボンに誘われて(2012年製作の映画)
3.6
スイスの堅物教師が自殺しようとした女性を救ったことをきっかけに、一冊の本に導かれポルトガルのリスボンに行き、著者の足跡を辿ることで新しい人生への歩みを始めようという物語。魂の叫びが記された本をきっかけに過去の自分を捨てて新しい自分に生まれ変わるというストーリーは結構好きだが、あまりにもきれいに流れすぎているのでリアリティを感じなかったのが残念だ。

高校教師である主人公ライムントは堅物過ぎるが教養溢れる人物で周囲から尊敬されている。5年前に妻と別れてからはチェスが生き甲斐になっていて、平凡な日々でも不満なく過ごしていた。そんな彼は登校途中、橋の上から身を投げようとしている若い女性を発見し助ける。しかし、目を離した隙に彼女はコートと一冊の本を残して消えてしまったので、彼女の手がかりを探したところ、リスボン行きの列車チケットが本に挟まれていた。コートと本を届けるため駅に行ったのだが彼女が現れ無かったので、衝動的に列車に飛び乗ったライムントは、車中で本を読み始め心を激しく揺さぶられる。そして、リスボンに着いたとき、ライムントは著者に会って足跡を辿ろうと決心する。。。

つまらない主人公が本をきっかけに変わっていくサマを上手く描いている。ストーリーの流れも非常にスムーズなので伝えたいメッセージはわかり易く終った後の印象も良い。また、著者の足跡を訪ねる旅は謎解きのようになっているので楽しめる。

しかし、すべてのシーンがあまりにも出来すぎて不自然になっているように思える。無遅刻欠勤という堅物を絵に描いたような教師が、本とコートを返すために教職を棒に振るような学校抜け出しをするに至るシーンは描写されているものの、常識的にはそこまでできないだろうと思ってしまう位に唐突だった。
また、リスボン到着後の著者を辿る旅もまるで詳細なスケジュールを事前に打ち合わせたかのように出来すぎている。メガネが壊れたのでたまたま入った眼鏡店で作り直したら、その担当者の叔父がライムントが知りたがっている著者の知り合いだなんて出来すぎているし、数十年も前のレジスタンス革命に身を投じた著者の関係者たちが順番にすんなり見つかっていき、どんどん話が見えていくのは、確かに面白いのだがまるでファンタジーのようにリアリティを感じさせないのだ。

また、主人公の事件前の生活描写が僅かなので過去の決別をするほどの動機も見えない。ライムントは知識をひけらかし傲慢でつまらない人物だということは彼自身が語るワンシーンで説明されているが、自殺未遂をした女と遭遇する前はその生き様に不満を持っていなかったのだから、今までの人生全てを否定してまで新しい生き様を追い求めるという動機が足りなく思えてしまう。

なので、「遊び半分でリスボンに訪れたらとんとん拍子でいろんな出来事が見えてきたので、運良く人生が変わっちゃいました~」って風になってしまっているのが勿体無い。

もう少し、苦難の末にたどり着くようなストーリーにすればリアリティを感じられたのにと思ってしまった。
エディ

エディ