茶一郎

ライト/オフの茶一郎のレビュー・感想・評価

ライト/オフ(2016年製作の映画)
3.7
 「何でそんなに暗い場所でやり取りをするんだよ」とホラー映画を見ていると、我々観客をこわがらせるため登場人物たちは日常的にありえない程、暗い場所での生活を強いられているようですが、今作『ライト/オフ』に限っては、その暗さに物語的な論理があります。「論理」と言ってもただ「節電好きのモンスター」が登場して電気を消して回るというだけではありますが。

 「光嫌いのモンスター」は光が無い・電気が付いていない時だけ出現する。今作のベースになった同デヴィッド・F・サンドバーグ監督による3分間の短編映画の冒頭1分にある、「光を消すと『いる』、点けたら『いない』、もう一度光を消すと『いる』、また点けたら『いない』」このアイディア一本だけを81分間に引き延ばした、そんな映画がこの『ライト/オフ』になっております。
 元々、YouTubeにアップされていた一本の動画から、『ソウ』、『死霊館』のジェームズ・ワン監督がデヴィッド・F・サンドバーグ監督を引き上げたという企画始動で、このデヴィッド監督は今作『ライト/オフ』に続き、『死霊館』シリーズの作品『アナベル 死霊人形の誕生』の監督に抜擢、さらに続いてDCコミック原作の『シャザム!』の監督にも大抜擢されるという見事なシンデレラストーリーを刻んでいます。
 
 さて、「暗い所だけに出現するモンスター」という特殊な設定が、まさに「暗い所って怖いよね」という人間の恐怖にまつわる生理を映像化にしたこの『ライト/オフ』。一応、責任能力が認められない主人公女性がモンスターから弟を守る過程で、大人(母親)になる物語という設定が垣間見えますが、かなり序盤で女性が外部から責任能力が認められていないだけでしっかりとした人物であることが分かってしまうので、この物語の軸は説得力を失い、本当に上述のワンアイディアだけで全編を押し込むという代物に出来上がっています。
 ビックリ系ホラーとしてすこぶる怖いですし、後半のブルーライトのみを光源としたバトルは、アイディアの勝利といった感じに見えました。
 今作のようなモンスターが出た日には、家中の電気を点けっぱなしにして電気代がかさみそうですが、やはり節電は大事ですよ、環境のためにも。
茶一郎

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