ねまる

ショート・タームのねまるのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.8
音楽の歌詞に見られる、
一番始まりに歌われる歌詞に、最後の歌詞が呼応しているやつ。

1曲の間に、色んなことが起こって考えて、最初の考えや疑問が、希望に変わっている。

この映画はそんな構成の映画。

短期の児童保護施設で、傷ついた子供たちと、過去に傷を負った大人たちの話なので、ポスターの雰囲気よりも中身は重い。

あまりに自然にショートタームでの日常が切り取られていて、子役を含めて演技力の高さが際立つ。

作品と同時に、グレースを演じたブリー・ラーソンの演技が大絶賛されて、世界中の映画祭を席巻したけれど、
私はあえてメイソンを演じたジョン・ギャラガー・Jrを賞賛したい。

虐待などにより、心の傷を負ったさまざまな子供たちに対して、自分も同じ過去を持つからこそ、体と心で全力でぶつかっていくグレース。
グレースの過去も、子供たちの過去も、扱っているテーマもここまでだけでは重過ぎる。

メイソンの存在は、心の壁から一歩引いて、大きな包容力とユーモアと愛で、グレースやショートターム全体を暖めている。

(下、ちょっとネタバレ)
ある少女が暴れて、
メイソンが作ったケーキを顔にぶつけられるグレース。
なんとかメイソンとネイトで抑えて現場が騒然とした雰囲気になった時、
ひそひそ声でメイソンが
「僕のケーキ美味しいでしょ」って聞く。
思わずグレースの顔が綻ぶ。
そういうとこ。

グレースとメイソンの互いを見つめる目だけで絆の強さを感じるし、
感情の起伏の大きいグレースに対して、
僕は君を愛しているからいつまででも待つけど、話してくれなきゃ分からないよ、と悟す。
話してくれなきゃっていうけど、英語では"let me in"
辛い過去を心の硬い鎧に封じ込めて生きているグレースと、話すんじゃなくて、寄り添いたい。

メイソンの、めちゃめちゃリアコっぷりに心底惚れ惚れでした。


原田マハさんより
「明けない夜はない
闇が深ければ深いほど、やがて訪れる夜明けが美しいことを、本作は教えてくれている。どんな子供にも未来がある。いかなる人にも夜明けは訪れる。そう、あなたにも、私にも。」


21/11/13
二度目ではなく改めて観て、
評価を4.0から4.8に上げました。
ブリー・ラーソン、JGJで4.0点、私の中では良作超えて秀作ライン。
改めて、ラキース・スターフィールド(マーカス)とケイトリン・ディバー(ジェイデン)でさらに0.8点加点。
観るたびに点数が上がっていくのも良いでしょう。
マイベスト映画TOP10からしばらく外すことはないだろうな。
ねまる

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