あなぐらむ

四畳半襖の裏張り しのび肌のあなぐらむのレビュー・感想・評価

3.8
神代辰巳の大正末期への想いは自身の生立ちに関係するようだが、関東大震災を期に数奇な運命を辿る少年に、日中戦争へと傾斜していく日本を絡めて描く中島丈博脚本はまさに、「男も女もアレしかないのよ」という刹那的な情交を描いていく。男女も母子も関係なくなっちゃう性の坩堝。

生まれてすぐに実母に嫉妬した女郎に連れ去られた少年は、幼いにも関わらず体を交えた女(不能者の男も)をも虜にし、育ての母さえ犯して子種を植えまくる。今でいう種ツケプレス魔少年ですな。
最後は満州へ旅立つ少年には、どこか天皇制批判も感じられる。ラストが千人針を乞う女達で終わる事からも明確な意図があると思う。

宮下順子の芝居はすっかり安定していて、絵沢萌子も同様。寧ろ芹明香の独特な存在感に不気味なものを感じるが、この作品はあの少年につきると思う。
四畳半もの二作はどちらも、神代の戦争と戦後への冷えた眼差しと、自らの余生への諦念みたいなものが強くにじんでいる。