もものけ

ザ・ベイのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ベイ(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アメリカ合衆国メリーランド州の独立記念日をリポートしたドナは、当時を思い起こすたびに惨劇のトラウマから抜け出ない日々を送り、映像と共に告発をしようとするのだが、その映像には恐ろしい物が写っていたのだった…。






感想。
POVモキュメンタリー形式で、当時を振り返るインタビューをとったファウンド・フッテージのパニック・ホラー映画。
好みがハッキリと分かれる作品で、地味な映像と低いドラマ性などに評価が低い作品でもあります。

個人的には、直線的に構成されたシーンを撮影された様々なショット映像というシークエンスにまとめあげているので、カメラマン兼主人公という違和感ありありなPOVよりはモキュメンタリーとして、事件を振り返る映像に映り込む恐ろしい出来事を垣間見るホラー映画として、チープながらもうまく構成されていると思いますので、割と好きな作品でもあります。
モキュメンタリー形式なので、余計なドラマ性を廃して、長撮影をせずにショットごとで編集されており、逆に物語としての緊張感が煽られるのがよい手法でございます。

作られた映像もTVやネットに公開された映像のようにリアルさを出しており、メリーランド州クラリッジを紹介しつつ人々の生活を背景に軽く振れた程度なのに、その街で起きた恐ろしい惨劇に引き込まれるような、ぼかしたドラマ性が持つ想像力が掻き立てられるように編集されていて面白いです。

環境汚染や陰謀論などのプロットを用いた社会性のあるテーマで、同時多発的に起こる出来事からパニックに陥る街の風景が合わさって、事件の背景には何があったかを考察するドラマをメインに描いています。

ゴア描写はなかなかのもので、変形した遺体や皮膚病変を訴える人々、喰い荒らされた筋肉組織など、写真やVFXを用いた手法で良く出来ております。

素人集団がパニックに立ち向かうという低予算にありがちなプロットはなく、CDCと医師のやり取りや、解剖医の見解、学者の調査、警察の捜査など多方面の意見が演出され、よりリアルさとパニックへの時間の推移を編集技術で効果的にまとめあげており、作り込みへの脚本の良さも伺えます。

オフショットとオンエアー映像を交えて、公開されたものとその影にある困惑ぶりが表現されているテレビやラジオの映像なども面白い表現です。

ここまでサーマルカメラや個人撮影、テレビ撮影、オンライン会議撮影などのショット映像を繋げて、ほぼ映像としては普通の映画のような構図であるためにPOV手法である意味をなさないように感じるかもしれません。
しかしこれはモキュメンタリー作品なので、荒い画素や高画質が入り混じった様々な視点の映像を用いているからこそ、リアルさが増す演出となるので、POV手法であるからこその作品ともいえるのではないでしょうか。
やたらとドッキリで驚かすのではなく、映像での不気味さでショッキングを演出しているのも評価できます。

突然症状が悪化して、殺して欲しいと懇願するシーンは、大袈裟な演出に見えますが、"群発性頭痛"の患者が耐え難い痛みのせいで自殺を選ぶほどに追い込まれる症例が実在するので、あながちありえない演出とはいえないのがまた不気味です。

突然変異の寄生生物なので、塩素を巻いてアッサリと解決してしまったラストには納得いかない方も多いように感じますが、個人的には話の落とし所としては"あれは何だったのか?"というよりはスッキリしており、ドナが生還した違和感もなくなる説明としてはよい構成だと思います。
原因については謎のままですが、放射能汚染、工業用水、濾過施設、産業として定着している養鶏場の環境汚染など、作中でも考察されているので、観客へ委ねる余韻もなかなか素敵なエンディングです。

とてもよく構成された映像手法が冴えている、チープでありながらも引き込まれる作品へ、4点を付けさせていただきました!

割と好きなので、何度も鑑賞しております👍
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