もものけ

処刑山 -デッド・スノウ-のもものけのネタバレレビュー・内容・結末

処刑山 -デッド・スノウ-(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

女の子たちとバカンスを楽しみに雪山の小屋へ来たマーティン一行は、小屋の中で金銀財宝を見つける。
しかしそれは、かつてナチス・ドイツが隠した財宝で、小屋は不気味な集団に囲まれるのだった…。






感想。
やっと発売してくれましたBlu-ray。
高画質で堪能させていただきました!!

ノルウェー産の珍しいコメディ・ホラー映画で、低予算ながらもアイディアとゴア描写で、ホラー映画としてよく出来た作品。

小屋という狭い空間に、外へ行かないと使えないトイレの小さな小屋を設定して、移動の必要性を持たせてホラー演出にしており、夜の雪山の怖さが巧みに利用されております。

B級ホラー映画では、ナチスがソンビになったり、開発した怪物や人体実験で超人化したりと、割と王道プロットでありますが、ノルウェーという第二次世界大戦でナチス・ドイツ軍による戦厄によって苦しめられた歴史から、ナチスの亡霊という逸話をゾンビになって蘇るプロットを用いて、嫌悪する悪の象徴にして忌み嫌う様子が、歴史を知るとより怖くなる仕掛けとしている点が面白い発想です。

小屋を訪れる謎の老人と、消息不明の女性を探す展開が、ストーリーの幅をうまく広げて、小屋の中だけの地味なホラー映画にならない工夫として、雪深いノルウェーの景色と山の怖さが、ロケーションで活かされています。
さすが雪国であり、雪の量は凄く景色も綺麗で、そこをスノーモービルでのアクションでアクセントを入れたりと、飽きない演出がうまい。

おバカな医大生達が、戦争の記憶も薄れた若い世代として描かれ、欲にまみれてナチス・ゾンビに殺されてゆくので、悲壮感などは全くなくなり、シリアスな展開の割にコメディ・ホラーとなってゆきます。
女優陣が美形なので、お色気要素も盛り込んで、典型的なホラー映画のプロットとしながら、同情できないおバカキャラなので、ゴア描写を堪能しやすくなっていて、ホラー・ファンには丁度よい演出でございます。

とても狭い小屋で、単純に壁や窓を突き破るだけの演出を、構図のうまいカット割りの速さと、強烈なゴア描写で籠城戦の効果を映像としてうまく表現しています。

後半は雪山での遭難を利用した追いかけっこ合戦です。
ホラー映画といえば夜という演出を裏切る構成。
なかなか展開が早いのでテンポがよいです。

特殊メイクが素晴らしい。
腐臭が漂ってくるかのようなナチス・ゾンビのミイラ化した特殊メイクは、なかなか気合いがこもっております。
顔面破壊や内蔵貪り、生首のオブジェなどなど、低予算ながらもしっかりと作り込んだホラー愛が素敵。
「死霊のはらわた」のファンなのか、パロディ盛りだくさんなのに、うまく表現しています。

カメラのカット割りや構図も良く、投げ飛ばされた先にある銃剣を手前に、医学生、ゾンビと3点構図で遠近感を利用してからのナイフ投げなど、アクション映画としての構図も理解している監督。
雪に埋もれて身動きが取れず、何処を向いているかも分からない生き埋めの感覚を、カメラを回して表現して息苦しさ満点です。
CGを活用してアクション要素をチープながらも、効果的にしている点も素晴らしい。

"あの、ナチスに襲われて"と電話をかけるおバカ医学生。
"ノキアめ、電池切れやがった"とブチ切れ、フィンランドを小バカにするジョークなど、お腹が痛いです(笑)

遭難組と、脱出組に、籠城組というストーリーを3分割して、尺にまとめて展開を広げるアイディアが良いです。

本作最大の見せ場である、チェーンソーとハンマーでのゾンビと一騎討ちは、間の抜けたピクニック音楽をバックに、残酷描写満点です。
さらに登場、スノーモービル。
取り付けたグロスフスMG42機関銃で撃ちまくり、エンジン動力を利用した惨殺シーンで、ゴア描写満載!!
首は飛ぶ、手足はもがれるで、強烈なゴア描写を演出しつつ、極めつけは「死霊のはらわた」名物シーンのチェーンソーで腕を切断。
メイキングを見ると、何度もリテイクを繰り返して、納得ゆくまで撮影しなおしており、造り手の意気込みが感じられました。
引きちぎられる手足の付け根を、ステーキ肉を使ってリアルにしているアイディアに関心。

低予算なのでゾンビはこれしか出てこないのよねと油断していると、大佐が一個師団を呼び出して絶望的展開へ。
実はヘルツォーク大佐が主人公なんですねこれ。

北欧といえばヘヴィメタル。
ゾンビ映画にはピッタリな選曲で、エンディング・テーマ曲がカッコよい。

何故彼らが襲われるのかというオチが、財宝を守るためという軍規に忠実なナチス軍人へ敬礼しつつ、低予算なのにここまで作り上げた名作ゾンビ・ホラー映画へ、4点を付けさせていただきました!

しかしマーティンは気づいていなかったのです…。
ポッケに忍ばせた一枚の金貨に。

"やっぱり、海へ行けばよかった"
もものけ

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