もものけ

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

アンブレラ社が管理するラクーンシティで、避難勧告が鳴り響く。
ラクーンシティ警察署では、スペンサー邸で消息不明になったブラボーチームを調べるべく、クリス・レッドフィールドはアルファチームに加わるのだった…。


感想。
ゲームファン、ミラ・ジョヴォヴィッチ版ファンなど、とてつもない批評を受けている作品ですが、個人的にはゲーム版"バイオハザード"をリメイクした映画としながら、過疎化する街や環境汚染、原因不明のウィルスなど現代社会への問題をテーマに警鐘を鳴らすプロットが、ホラー映画としたゲームをうまく表現している点では、とても面白い作品であるといえます。

オリジナル・キャラクターが勢揃いで、ドーベルマンに感染したゾンビ犬など、ゲーム版のイメージをキチンと再現しているので、それほど揶揄される低評価とは思えない作りです。
確かに、ゲームの映画化は失敗作品が多い中に、ミラ・ジョヴォヴィッチ版の"バイオハザード"は、同タイトル”Resident Evil”として、別作品でありながらもゲーム版の雰囲気をしっかりと表現した傑作であり、その当時は全く別キャラ、別ストーリーでありながら"バイオハザード"の邦題を冠する充分に出来の良かった映画であるので、比べてしまうと地味になってしまうのかもしれません。
しかし、"バイオハザード"のゲーム版は"洋館事件"なのであり、狭い館を舞台にストーリーを広げているので、地味なのは当然。
それよりも、キャラクターにハマっているキャスティングの良さを、見事に脇役役者達を起用しながらも立てる演出は、地味さを通り越しているほど。
クレア・レッドフィールド役のカヤ・スコデラリオなどは、赤い革のジャケットをトレードマークに、見事にスタイル抜群に着こなすクレアのイメージ通り。
特徴的な美しい顔立ちと高い演技力の女優で、個人的には「テッド・バンディ」や「クロール 凶暴領域」から注目していました。
設定や性格など変えていますが、レオン、ウェスカー、ジルなども見た目のインパクトが良い役者でハマっており、カラーコンタクトなどでギラついた眼をゲームの雰囲気タップリに表現しているのも良い。
全く同じストーリーで映画化するならCGアニメで充分であり、オリジナル要素を盛り込んでホラー映画にしているリメイク版としては、充分に満足できました。

ゲームというありえない映像空間を、照明効果で表現して、不穏な音楽なども効果的に、"ラクーンシティ"で始まる惨劇の幕開けが見事に演出されております。
クリスとクレアの絆の深さを、孤児院育ちという新しい設定で描いて、ラクーンシティで落ち合って別れる違和感ない展開や、まだ発生段階の街の恐怖がアンブレラ社の不穏な存在と相まって、ゾンビ・ホラー映画としては王道を守りつつ、スピード感ある演出で楽しめます。

"かゆ、うま"を無理矢理にもってきたのは、さすがに笑いましたが、レオンとウェスカーが間抜けキャラに変更されすぎなのは残念。
最近のホラー映画として、ビビらせる音を不必要なまでに使用するのもまた残念ですが。

とはいえ、R.P.D.の玄関やラクーンシティをCGでキチンと再現していて、アルファチームの衣装もシッカリと再現。
ラクーンシティ警察署内部の映像もゲームの雰囲気がちゃんと出ています。
トレーラー車の横転や、炎に焼かれ歩くゾンビなど、ゲーム版の見どころ満載。
これらは、ミラ・ジョヴォヴィッチ版とは違うオリジナル版のリメイクとしては、地味ながらもファンとしては満足。
個人的には"バイオハザード"は、1・2・3のみが好きな私には、ワクワクさせられる作品です。

ウイルス感染をプロットとしているので、いきなりゾンビ化するのではなく理性が少しずつ失われる暴徒として演出しているのは斬新。
これは、ゲーム版の"かゆ、うま"からの発想を忠実に再現しているのも頷けます。
そして、発生当時を舞台にしているので、何が起きているのか混乱するキャラ達の視点から、生還する無理やりさがないので、自然であります。

1作目が大好きなので、ヘリで洋館へ訪れるシーンなどは胸熱でございます。
有名な洋館での初遭遇するゾンビもホラー映画の雰囲気たっぷりに再現。
さらに洋館では、ゾンビの数は一気にボリュームアップされており、臨場感があって良いです。
薄暗い洋館に、作り込まれたセットで、中途半端なホラー映画よりもシッカリと、照明効果も違和感なく見事。
なにせカプコンが協力しているので、納得。

無理やりとの評価もあるかもしれませんが、洋館の鍵やピアノ、オイルライター、ナイフなどのゲーム版アイテムまでも忠実に再現しており、謎解きゲーム感覚で違和感がありません。
クレアのショットガンスタイルがゲームのままなのに感動。

なんと"アッシュフォード家"の"トンボの羽根切り"が地下室フィルムで登場!
ここまで"バイオハザード"をキチンと映画化しているのは驚き。
孤児院育ちでアンブレラ社に縁があり、謎の友達の不気味さが"アッシュフォード家"に繋がることで、民間人であるクレアがアンブレラ社へ恨みを抱く構図を、しっかりと掘り下げて描いています。
各キャラクターの背景を短い尺の中で丁寧に演出している分かりやすさ。

ゾンビメイクやクリーチャーデザインもCGのできが素晴らしく良く、ホラー映画としての暗い映像に映えるゴア描写が素敵。

両親が殺されたのに列車でにこやかだったり、目の前でロケットランチャーぶっ放したりと、リアルさがないですが、それはゲーム版のリメイクだからです(笑)
ちゃんとエイダまで出てくる作り込みは、素晴らしいの一言。

動きのあるカメラワークと、構図のうまさが際立つ監督。
細部に渡って作り込まれた映像。
ホラー映画の演出も分かってらっしゃる。
無理やり現代劇に変更せず、ゲーム発売当時のアイテムを使っているのも良いです。

オリジナル版のリメイクとしては、個人的には申し分ない出来の良さに、4点を付けさせていただきました!
何度も鑑賞したくなる名作の一つでございます。
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