円柱野郎

仁義なき戦い 代理戦争の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

戦後の広島で起きたヤクザの広島抗争について、当事者である元組長が獄中に記した手記を基にしたノンフィクションの映画化作品の第3弾。
広島の暴力団・村岡組の跡目候補だった杉原が殺された。
広島での勢力を巡る広島・呉・神戸の暴力団の思惑が交錯する中、しだいに抗争の火種が燻り始めていく。

「仁義なき戦い」シリーズの3作目という事になるけど、ストーリー的には1作目の後の情勢を描いているのでこちらが直接的な1作目の続編という事になるのかな。
これも2作目から5カ月後の公開という事になるわけだけど、こういったプログラムピクチャー的なハイペースでの制作も時代を感じるところですな。
それでいて映画内容自体の熱量が全く落ちていないのがすごいところだわ。

本作ではいよいよ神戸・明石組の介入によって事態がこじれ、第二次広島抗争の下地が出来ていくあたりが描かれるわけだけど、組織や個人の思惑が入り乱れに乱れ、集団心理を描いた群像劇としてはとても面白い。
そういう意味では、どちらかというと個人のドラマになっていた2作目に比べても完全に1作目のテイストに戻っていて、実録ヤクザ映画という風格たっぷりの作品に仕上がっていると思う。

その中では主役の広能(菅原文太)は昔気質なヤクザの感じがあって、観る側に共感しやすくなっているけれど、これは作劇的な都合もあるだろうか。
広能組に入ることになった若者の倉元(渡瀬恒彦)も観客の感情移入要員だよね。
初っ端の不器用な感じから、苦労させてる母親に洋モクを渡す関係性を見せつつ、最後は功を焦って返り討ちに遭うという若衆の一人。
基本的に組織間での情勢下では脇役でしかないものの、エンディングでの広能の怒りに直接繋げさせるためのキャラクターであるという意味ではドラマツルギーにとってとても効果的なキャラクターだ。
演じた渡瀬恒彦は1作目で別のキャラを演じていたけど、しれっと別人での登場ですな。
そういえば梅宮辰夫や川谷拓三も前作までとは別のキャラで2回目の登場だけど、その辺のおおらかさは良いねえ。

展開的には相変わらず山守組のタヌキ親父(金子信雄)が話をこじれさせているように思うんだけど、広能目線で観ているとどんどん憎しみが高まってくるのでたまりませんな(苦笑)
打本組の打本も肝心なところで弱腰のくせに策謀めぐらしてイキがってる感じが、憎まれ役としていい味を出しているよな。
演じる加藤武もそういう実業家ヤクザの雰囲気を上手く出してるところがさすがですわ。

本作は第二次広島抗争を描いた次作「頂上作戦」ありきの終わり方をするのだけど、広能の怒りからの引きが続編への引っ張り方としても上手い。
そりゃあ観たくなるよ。
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