円柱野郎

ボーはおそれているの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

不安神経症気味の男・ボー。
彼は母親のいる実家への帰省当日にトラブルに遭ってしまい帰省できなくなるが、しばらくしてその母親の訃報を知る。

「ボーはおそれている」。
…何について?
という話ですね。
全体的に4幕で構成されていて、不条理コメディというかブラックコメディというか、そんな感じで主人公に対する不安な体験を観客にも共有させてくる作品でした。
アリ・アスター監督の作品なのである程度身構えて観たのだけど、ホラーテイストは弱めなのにどうにも不穏に感じてしまう場面が多々あって、こういう「味」を出すのは美味いなあと感心した次第。
辻褄の合うところと支離滅裂さが綯い交ぜになってはいるけれど、それがこの世界観の魅力ですよね。

映し出されているものは主人公の主観。
そういう意味ではある種の叙述トリックみたいなところもあるのだろうけど、観ているものと真実が果たして合致しているのかどうかも怪しいわけで。
冒頭で渡された薬の副作用かもしれないし、強迫神経症が見せる幻想かもしれない。
それが分かった上でもそのまま主人公の内面に観るものを巻き込んでいく演出は上手かったと思います。

一方で上映時間3時間はやや長さを感じたのも事実。
3幕目の森の劇団の話は主人公にとってある種の癒やしだったかもしれないけど、ちょっと長さを感じたかも?
それ以外はとにかく主人公がずっと不安になってるし、場面によってはそれが笑いに昇華されていてやられたなあ。
個人的には天井に張り付く男と、腹上死した死体の片付け、あと父親の姿(怪物w)に笑ってしまった。
主演のホアキン・フェニックスが醸し出す味が、主人公から目を離せないものにしているのは間違いない。

最後まで観ると、彼が真に恐れていたのは"母親"だったことがわかるし、神経症気味な原因もその母親にあるのではないかと感じる。
色々な断片が繋がっていく4幕目が種明かしのフェーズだけど、狂言だったというだけだとちょっと物足りない印象はある。
ただただ母親がヤバいなあとは思ったけれど。
それでも最後まで主人公は自責の念に苛まれ、(彼の内面で)自身を裁判にかけて有罪にしてしまった。
やっぱりこの監督の映画はバッドエンドなのかw
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