てつこてつ

シャイニングのてつこてつのレビュー・感想・評価

シャイニング(1997年製作の映画)
3.6
あれ?これは本来はTVドラマなのに、何故に映画版に??

鬼才キューブリック監督作「シャイニング」の換骨奪胎具合に原作者のスティーブン・キングが怒り心頭で、彼自身が脚本を手掛けた、ある意味、当時話題にもなった作品。

自分は、キューブリック版がとても好きで、その後原作も読んでいるのだが、確かにこのTVドラマ版は原作に忠実で、タイトルにもなっている少年が持つ超能力“シャイニング”がもう少し丁寧に説明されていたり、アルコール問題を抱えた父親と妻、息子の関係が描かれているので、中盤以降の展開に説得力もあったりするが、改めてキューブリック版と比較してみると、キューブリックがどれほど上手く原作のモチーフを壊すことなく、より格調高いゴシックホラーに原作を昇華させたかその手腕の凄さを思い知らせれる。原作やこのTVドラマでは動物の形をした生け垣設定をキューブリックは迷路に変えて、ああいうクライマックスに相応しい展開と結末を持ってきたのも個人的には好み。

本作は、原作に忠実が故に、よりお化け屋敷感が出ているが、それはそれで有り。古くからあるお化け屋敷物に超能力を足すなんて、さすがにスティーブン・キングがモダンホラーの帝王の称号を得ただけのことはある。

DVDレンタルで鑑賞したのだが、二枚組で全3話構成でトータル268分という超大作ではあるが、キングファンなら見て損は無いと思う。トム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた「卒業白書」のレベッカ・デモーネイは美しいし、何と言っても次第に狂気に駆られる父親役を演じたスティーヴン・ウェバーの熱演は、顔芸ではキューブリックのジャック・ニコルソンには負けるものの、むしろ普通に家族を愛する父親がホテルに棲み着く霊の影響でどんどん妄想に取り憑かれる丁寧な芝居には軍配が挙がる。対して、キューブリック版では親子の絆を見ることは殆ど無く、最初から怖めの父親像であった印象。

舞台となるリゾートホテルや霊の描写にも、そこまでチープ感は無い。

にしても、キューブリック版があまりにも有名になってしまった為、何十年も経った後に、原作通りのホテルの終焉を映像化するために「ドクタースリープ」を書き下ろしたキングの執念も大したもんやね。
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