秋日和

アクトレス 女たちの舞台の秋日和のレビュー・感想・評価

アクトレス 女たちの舞台(2014年製作の映画)
3.5
本作は、もう若いとは言えない一人の女優=ジュリエット・ビノシュの苦悩や葛藤を描いている。そんな彼女は映画が始まってから幾度となく、スマホやタブレット、TV画面、そしてスクリーン等の<モニター/映像>を見つめていたのだけど、その先には一体何があるのだろうとつい思ってしまった。彼女が見ているのは過去か、現在か、或いは未来か。どれなんだろう。もしかしたら、そのどれでもないのかもしれない。
じゃあ映画を観ている自分はどうだったのかと言えば、若くはない肢体をさらけ出しながらハハハと声を立てて笑うビノシュを見て、ポンヌフ橋の上で笑い転げていた若き日の姿を思い出さずにはいられなかった、というのが正直なところ。経年って辛い。それはカサヴェテスの『オープニング・ナイト』も一緒だけど(幾重にも引き裂かれる痛み……!)。
辛いけど生きていかなくてはいけないこの現実に対し、アサイヤスは一つの解答(のようなもの。本来的には宙吊り)を用意する。それはきっとデビューしたての頃では用意できないもので、今年還暦を迎えた彼だからこそなんじゃないかなぁと、ボンヤリ思ったりしました。『クリーン』同様窓ガラスの映画であり、また『イルマ・ヴェップ』同様失踪の映画でもあります。
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