にっきー

アクトレス 女たちの舞台のにっきーのネタバレレビュー・内容・結末

アクトレス 女たちの舞台(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

邦題が『アクトレス〜女たちの舞台〜』とサブタイトルまで付いているが、観てみると原題『Clouds of Sils Maria』がしっくりくる。これに敢えて、勝手ながらもサブを付けるとすると、『〜彼女(マリア)が彼女(ヘレナ)を受け入れる道程〜』かなと(長いけど^^;)。

彼女(マリア)が固執していたのは若さ、ではあるものの、漠然とした女性としての若さだけではあるまい。彼女は弱い人ではない。女優として大成しており、れっきとした自分というものを持っているように見える。むしろ固執しているのは、ヘレナを追いやったシグリット、ひいては今現在の自分ではなく、過去に生きた自分を閉じ込めているのではないだろうかとーーー。彼女が女優として成功するきっかけは、恩人ともいえる劇作家ヴィルヘルム・メルヒオールの舞台「マローヤの蛇」でのシグリット役。シグリットは上司であり女社長のヘレナを結果として追いやってしまう。また、実際当時演じていたヘレナ役の女優さんを軽蔑し哀れんでいたのではないだろうか。

自分で自分を閉じ込めている。マネージャーのヴァレンティーヌ(ヴァル)は、そんな風にもマリアを見ていて歯がゆかったのではないだろうかと推測する。

「マローヤの蛇」とは、ヴィルヘルムの山荘のある景勝地・シルス マリアで起こる珍しい気象現象で、山あい沿いに雲が這うように進む様のことを指しヴィルヘルムはこのマローヤの蛇に随分魅せられたようだ。彼は、シグリットとヘレナを同一視していたのではないだろうか。

単に世代交代とか、若さへの執着を捨てるとか、老いを受け入れるとか、そんな単線ではない何かが最後マリアに起こったのではないかと思いたいし、彼女の元を去ったヴァルも、続編を手がけたクラウスも、マリアの次回作となるであろう映画をオファーする監督も、そしてヴィルヘルムも期待したのではないだろうかとも感じる。
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