タカシサトウ

アメリカン・スナイパーのタカシサトウのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 アメリカ大使館爆破や同時多発テロに怒り、首謀者を倒そうと海軍に志願したクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)が、テロの首謀者とは関係のないイラク戦争でも、祖国を守るため(?)にと戦場へ。並外れた才能の狙撃兵として、次々と敵を倒していくが、段々心が蝕まれていって…という話。

 ロシアのウクライナ侵略戦争をテレビで観ていると、こんなに酷いことが、と思うけれど、こちらの身が危ないと思うことはない。

 しかし、これを観ていると、あたかも自分が戦場にいるかのようで、怖くて緊張する。また、いきなり撃たれたり、死んでいく兵士に衝撃を受けるし、クリス・カイルの身を案じる妻のタヤ・カイル(シエナ・ミラー)の気持ちを思うと心が痛む。

 クリス・カイルが、妻が止めるのに何度も戦場に行かずにはいられないこと自体が、PTSD(心的外傷ストレス障害)の症状だそうだ。そのたびに生きて帰って来るのに何とも酷いことかと。 

 特にむごいのは、対戦車爆弾を投げようとする子供を撃ち殺す所と、死んだ子供から爆弾を取って投げようとする母親を殺す所。殺さないと味方が殺されるからだろうけれど、あまりにも酷い。再び、武器を持つ子供を撃とうとするところも辛い。

 ラストで、冗談でタヤ・カイルに銃を向ける所もかなり緊張した。戦争で何度も人を殺すことが心を蝕んでいくのではと思った。

 彼を称えるかのような周囲の終わり方だけれども、つらい雰囲気の終わり方とも言えると思った。クリント・イーストウッドは、イラク戦争には反対していたとのことで、英雄物語では終わらせないようだ(2022.6.6)。