エディ

約束の地のエディのレビュー・感想・評価

約束の地(2014年製作の映画)
3.7
ロード・オブ・ザ・リングでアラゴルンを演じたヴィゴ・モーテンセンが、制作、主演製作だけでなく音楽までてがけた不思議なロードムービー。完全な自己満足で自慰的な作品だが、確信犯的な自慰作品なのでこれはこれでありかと感じるし、広大なパタゴニアの自然があまりにも美しいので、また観たいと思わせてくれる。

娘を連れてパタゴニアに出征したデンマーク人ディネセン大尉がこの映画の主人公。彼はパタゴニアの大平原で野営をしながら同僚たちと敵襲撃のプランを練っていたが、ある夜忽然と一人娘インゲボルグが消えてしまった。敵に寝返ったスルアガ大佐の情報をもたらしたコルトという青年が連れ出したのだろうと推測し、馬を駆使してディネセンは娘の捜索に出かけるが、途中で馬を盗まれてしまったので、徒歩で広大な平原を彷徨い始める。そんな中に一頭の犬が現れたので、その犬に付いていくと。。。

この映画は謎ばかりだ。ストーリーが難解なのではなく意味不明のシーンや登場人物が繋がっていないのだ。いきなり自慰をしていたピッタルーガ中尉はその後どうした?コルトは誰が殺した?ココナツ頭の敵はどうなった?岩倉に住む婆さんは何者だ?ラストで「パタゴニア→故郷の館→パタゴニア」と飛ぶシーンは何?など突込みどころが満載なので、いかにもメタファーに富んでいて何度も観れば解釈できそうだ。

冒頭の犬を飼いたいというエピソードやハウハのプロローグからすると、キーワードは犬にあるような気がする。
なので、最初から最後まで「犬が観た夢」と解釈できそうだし、自宅に戻ってからの回想という気もする。また、伝説の地への訪問なので、時間が巻き戻されるか未来に進行して未来のインゲと対話するといった解釈も可能だろう。

しかし、実際はそんな深い意味は何もなく、単純に撮りたいものを脈略なく撮っていたらこうなっただけの気がする。つまり、この映画はヴィゴの自慰的な自己満足作品なのだ。
「俺は大ヒットしたロードオブザリングみたいに、何かを求めて広大な大地を彷徨う映画にまた出た~い!」という思いが作られたんだと思う。なので、深い意味なんてなくて良いのだ。
自分は独りよがりの作品は嫌いなほうだが、この映画に対しては好感を持ったのは、この映画は確信犯的な自慰作品だからだと思う。なにしろ、映画が始まって直ぐに中尉が海辺で自慰をしているからだ。「私は欲望の赴くまま、好きなように演じさせていただきますよ」という宣言をしたようなものだ。この開き直りのせいか、純粋に映像美だけを楽しめる。

パタゴニアの自然の美しさ。そして、大平原なのに広角を多用してアップが少ないので、登場人物は点のように見えていて表情を伺えないシーンばかり。自然の雄大さと人間の小ささの対比、そんな中で何かを求めることの苦悩と、こんな試練を経験しているからには、なんらかの神秘体験があっても良いだろうという気になってくる。

観終わったあとに、「狐につままれた」ような気になるが、気持ち良く化かされた感じなので後味は良かった。
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