[湖底から何を引きあげたのか]
ライアン・ゴズリングの初監督作品である『ロスト・リバー』は、経済破綻でゴーストタウン化してる街で暮らす家族の物語だ。
たしかに感想で多くの人がおっしゃる通り、一緒に『ドライヴ』や『オンリーゴッド』を制作したレフン監督の影響や、リンチのような悪夢的な映像に見える。
確かに表面はそう見える。
だけど自分が感じた印象は少し違った。
この映画の撮影監督であるブノワ・デビエという人物。この人の作る空気感の方を感じたからだ。
ブノワ・デビエは、昨日書いた『アレックス』などのギャスパー・ノエの作品を多く手がけていて、『ロスト・リバー』でのネオンの感じや、人物の映し方はやはりブノワ・デビエの作る映像感だったように感じる。
(後半でカメラを横にして「人物を縦にした撮り方」などはアレックスなどでもありましたね)
それと、ロスト・リバーの前にあたる時期にハーモニー・コリンの『スプリング・ブレイカーズ』(個人的には傑作)もブノワ・デビエが撮影をしていて、今作にもその雰囲気を感じた。
前半に一瞬ハーモニー・コリンが頭をよぎったのはそのせいかもしれない。
個人的に思ってる事だが、このブノワ・デビエの映像感は色や構図で「人物の心の内側が見えてくる」ような美しさがある事だ。
今作もその美しさと共にライアン・ゴズリングの豊かな感性がある種「ロマンチック」に描かれていた。
しかし、映像は素晴らしいのだけれど、前半から後半まで、出てくるキャラクター達は自分が好む重層的な感情を持ってるようには感じなかった。
けれど、後半、主人公が呪いを解くために湖底からあるもの引きあげた時、
ライアン・ゴズリング自身が深く深く潜った末に
ついに湖底から
「映画」を引きあげた
そんな風に私には見えた。