よしまる

アデライン、100年目の恋のよしまるのレビュー・感想・評価

アデライン、100年目の恋(2015年製作の映画)
3.2
 いかにぶっ飛んだ設定でツッコミどころ満載でも、そこで起こるドラマがしっかりしていればなんの問題ないことは、過去の幾多の名作が教えてくれている。

 こういうテーマだと、どこに焦点をあてるかによって作風も大きく変わる。終わらない自分の生と、当たり前のように訪れる周りの死。ところがこの作品はその残酷さからなるべく距離を置き、ひたすらに身を潜めて過ごす女性を描いている。唯一の生きがいである娘がいることで、耐え難い苦痛に気が狂うこともなく暮らしているのだろう。それが物語のリアリティをかろうじて支えていると同時に、このアデラインという女性の何十年にもわたる孤独を端的に表している。

 そんな彼女が経験する新しい恋、そして懐かしい恋の想い出。まだ20代のブレイクライブリーの奥行き感のある演技が素晴らしい。映画の設定と実年齢がほぼ同じ、けれども映画の彼女の精神年齢は100歳と考えると当然それなりの演技が必要なわけで、チャラい20代ではなく絶妙な老け具合を感じさせてくれた。

 そしてファッショニスタぶりがまたすごい。会社勤めのセーター姿に始まり、パーティードレス、1920年代のフラッパーから60年代スウィンギングロンドンまで、時代時代のスタイルをぜんぶ着こなしてしまうのを観ているだけで超楽しい。身長178cmもあると知って、じゃあ過去に共演していた夫のグリーンランタンはいくつあったんだ?と調べたらライアンレイノルズ188cm。すげー、ナイスカップルなはずだわw
 (ついでにハリソンフォードも185cmだって!通りで絵になる)

 残念なのは冒頭と結末について。ストーリーがあまりにもご都合主義すぎることは、このレビューの最初に述べた通り実はあんまり気にならない。
 それよりも、おまえ誰やねんという語り部が唐突に状況説明をするのが個人的には好きじゃなくて、ラストも29歳でそのオチというのも、もう少しほかになかったのだろうか、というところ。設定そのものよりもやはり脚本や演出による「見せる力」に期待してしまうのは映画好きの悲しさ(ワガママ?)なのかもしれないな。