LalaーMukuーMerry

オマールの壁のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

オマールの壁(2013年製作の映画)
4.4
俺の名はオマール、イスラエルに占領されたパレスチナで暮らす先の見えない若者。俺の町には何故だか知らないが壁がある。10mくらいある高い壁だ。国境というわけではない、壁の向こうにもパレスチナ人が暮らしている。全くわけが分からない。俺の彼女ナディアは壁の向こうの町にいる。だから俺は今日もロープを使い、壁を越えて彼女に会いに行く、イスラエル秘密警察の監視を振り切って。
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俺には幼なじみの友達アムジャドとタレクがいる。タレクはナディアの兄で、俺たち三人のリーダー格だ。俺たちは反イスラエル活動の組織に入っている。ある時俺たちの活動がバレたらしく、秘密警察に急襲された。俺たちはちりぢりになって逃げたけれど、俺はつかまってしまった。秘密警察で拷問を受けたが、決して仲間の名を吐かなかったし、逆に奴らに俺を信用させることに成功した。奴らは俺を釈放し、おとりとして泳がせて反イスラエル組織の人間を捕まえようとした。
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町に戻れた俺は壁を越えてナディアに会いに行った。彼女はとても心配してくれていた。俺はナディアにプロポーズした。
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俺は敵の裏をかいて、仲間と協力して逆襲する計画くわだてた。だが、決行当日、俺は甘かったことを思い知った。敵の方がずっと組織も大きく、金も装備も豊富にある、情報もどこかから漏れていたようだ。裏切り者がいる。再びつかまった俺に、奴らは裏切りを強要してきた。さもないとナディアの命が危うくなる…
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再び町に戻された俺は、また壁を越えてナディアに会いに行った。すると、彼女がアムジャドと仲良く話し込んでいるところを見かけたのだ。これはどういうことだ・・・?

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徹底して主人公オマールの目線で描かれるから、自然に彼に感情移入していく。人間には神の目線はない。自分の目の届かないところで何が起こったか、他の人たちが何をしたかは想像するしかない。疑心暗鬼は必ず生まれる。何を信じ何を疑えばよいのか? 
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ストーリー展開に引き込まれ、ラブストーリー部分の終盤の切ない結末にえっ!と驚かされる秀作。ラストカットも秀逸。パレスチナの町中の逃走アクションはとても緊迫感があり、社会派ドラマとしても、ドキュメンタリータッチのサスペンスとしてもかなり良いと思います。