yukihiro084

シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのyukihiro084のレビュー・感想・評価

4.8
ジョン・ファブローがブチ切れる
シーンがある。耳が痛い。
たしか僕もファブロー監督作の
(カウボーイ&エイリアン)を
けちょんけちょんに言った。

『傷つくんだよ!』

彼は何に怒っていたのか?
彼はなぜあそこまで怒っていたのか?
ロバート・ダウニーJr.と
スターレット・ヨハンソンは
なぜ出演したのか?

ジョン・ファブローが
(ライオン・キング)をやると
聞いた時、けっこう意外だった。
(ジャングル・ブックと似たことを
やるんだな)と思った。二番煎じ感が
否めなかった。思えばファブローは、
2008年からディズニーとの仕事が多い。
それも歴史のある、原作ファンの多い、
失敗できないようなプロジェクトが
多いような気がする。

どうなるかなんて、先が全く見えず
成功の確信なんてなかっただろう
(アイアンマン)の一作目。
有名な話のロバート・ダウニーJr.の
キャスティングにおけるスタジオとの
衝突。勝利宣言のようなダウニーJr.が
言った『I am iron man』の意味の深さ。
大きなプレッシャー。スタジオ側からの
好き勝手な要求。大ヒットした一作目の
後のディズニーやマーベルの上層部、
熱狂的なファンや批評家たちの
態度や声の変化をファブローはどう
受け止めていたんだろうか?

アイアンマン1と2の後、ファブローは
製作と主演までこなし、今作を発表する。
ファブローは自分で(食材)を買い、
自分で(味付け)をし、自分で(コース)
を考える。劇中ファブローは言う。
『楽しい。』って。『ご機嫌だ。』って。

さて、映画。もう5、6回観ている。
キューバの風。カリブの玄関口としての
マイアミの多様な人種と食文化。
特別な歴史を感じる美しい
フレンチ・クォーターの街並みと雰囲気、
誇らしげなテキサス州旗ローン・スター、
それは、アメリカの誇りであり原風景。
自分たちの味を押し付けるのではなく、
その街で愛されている料理をアレンジして
提供してゆき、みんなを笑顔にしていく
フードトラック。キューバ・サンド、
ベニエ、テキサス風BBQ。
カリスマシェフだったカールは
力むことなく自然体でそれぞれの街に
寄り添う。不思議とカールは
力むことなく自然体で息子とも
寄り添い始める。

もし、カールが自分の革新的で独創的な
料理を『どうだ美味いだろ』と
押し付けるような主人公だったら、
この作品は、こんなにみんなを笑顔には
しなかっただろうし、あのラストには
けっして着地しなかったろう。
yukihiro084

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