リッキー

はじまりのうたのリッキーのレビュー・感想・評価

はじまりのうた(2013年製作の映画)
4.5
885本目。
音楽を題材にした映画は大概おもしろいので,何を鑑賞するか迷ったときはこのジャンルを選択する傾向にあります。この映画は期待を上回り,音楽だけでなく,しっかり上質なドラマに仕上がっていて,大金星の作品でした。

1度観終わった後,余韻が抜けきれず数時間後に再鑑賞してしまいました。私は同じ作品を直後に見直すことほとんどないので,自分でも驚いています。それほどこの作品には魅力を感じました。

冒頭,小さなBarのステージでのグレタ(キーラ・ナイトレイ)の弾き語りから始まりますが,このシーンを作品中に何度も登場させています。
1回目はグレタ目線,2回目はダン(マーク・ラファロ)目線と視点を変えて,3回目はグレタがこの店に来た経緯として登場します。このような手法は珍しくはありませんが,この作品に限っては相乗効果が抜群で素晴らしい構成になっています。

この「はじまりのうた」が、多くの人々の人生を変えていきます。
グレタとダンがイヤホンで互いの好きな曲を聴きながらNYの街を歩きさまようシーンは鑑賞していて微笑ましいです。本当に音楽好きなダンのうれしそうな表情が忘れられません。マーク・ラファロは魅力的な役者さんです。

終盤,昔グレタがデイブ(アダム・レヴィーン)へクリスマスプレゼントとして贈った曲を,スターになったデイブがアコースティックヴァージョンでファンの前で熱唱します。
グレタは曲の完成度,堂々と歌い上げるデイブ,それに一体化したファンを肌で感じ,涙してしまいます。この涙の意味がとても複雑です。
彼女は曲の途中で会場をあとにし,軽快に自転車に漕ぎ出しますが,すっきりと吹っ切れた様子でした。それからすべてを悟ったようにエンディングに流れていきます。

キーラ・ナイトレイの声は透明感があり,エディ・リーダーのような歌声で,単体で聴いていると「お上手!」と感じますが,本気のアダム・レヴィーンの歌を聴いてしまうとプロとアマの違いがわかってしまいます。
最近のマルーン5はデビューしたころと比べて,洗練されキャッチーな曲が多いような印象があります。彼等くらい大物になれば本人達の意向が直接作品になっているかと思われますが,メジャーデビュー直後はレコード会社からいろいろ制約され苦労したのであろうと予想されます。本作品は本人出演のため,なんだか生々しく感じてしまいました。

この映画のシーンにもありましたが,曲を売るためには優れたプロデューサーの腕次第です。最近のプロデューサーの流行は売れっ子DJが手掛けていますが,売れる曲と名曲はまったく意味が違います。私はセールスとは無関係に音楽を楽しんでいますが,世間に出回わらず,埋もれている名曲まだまだはたくさん存在しているかもしれませんね。
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