ジェイコブ

徳川女系図のジェイコブのレビュー・感想・評価

徳川女系図(1968年製作の映画)
3.0
5大将軍綱吉の時代。将軍のみと肉体関係を結ぶ大奥達は、世継ぎの生まれていなかった綱吉から寵愛を受けるため、あの手この手で自らの魅力をアピールしていた。綱吉は、上っ面だけで塗り固められた彼女達の言葉や権威主義に辟易としていた。そんなある日、太腿にほくろのある女中のおみつに目を留める。綱吉は彼女の魅力に惚れ込み、夜伽の相手に指名する。おみつは密かに思いを寄せていた綱吉の相手ができると心躍らせるが、他の女達の嫉妬を買ってしまう……。
石井輝男監督の、東映ポルノ初期作品。
エログロ満載であった同氏監督作品の「徳川入れ墨師……」に比べ、人間不信に陥った綱吉が、自分のことを心の底から慕う人の真摯な気持ちに触れ、人を疑う事の愚かさを学ぶ人間ドラマの要素が強い作品。菊池寛の「忠直卿行状記」が内容に近いかも。
女相撲の優勝者おさよや、太腿にほくろのあるおみつなど、綱吉が興味を持つポイントが独特で面白い。生類憐れみの令で、歴史上では暗愚な点ばかりが目立つ人だけど、囚人の扱いを改善したり、野犬被害を激減させたりと実は良い点もあった事から、近年評価が見直されているとか。綱吉は、全てを力でねじ伏せる初代の家康に比べ、人が良すぎたとも言われているので、本作含め、色々な意味で気の毒な描かれ方をしている印象。(柳沢吉保は水戸黄門でも悪の親玉として描かれている笑)
個人的には、もっとカルト的な描写がくると構えていたこともあり、少し肩透かしを食らった。