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沈黙ーサイレンスーのスマイリーのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.5
スコセッシの力作。
マーティン・スコセッシといえば、『グッド・フェローズ』で完成させた、生き生きとしたカメラワークや編集、そして独白スタイルの語り口で有名。新しい映画文体を作った、これだけで偉大な監督であり、後続の映画にも多大な影響を与え、しかもその影響は今もなお続いている。
でもそれだけではない。彼は1つ1つの場面を、端正に、緻密に作り上げていく技量もまた持っていた。思えばスコセッシはシネフィルであり、過去の無数の映画群に敬意を持ち、最近では『雨月物語』の修復を手がけた。今作は、「こっちの方のスコセッシ」が炸裂した大力作となっている。
あらゆる場面を見ても、この場面をどのように撮れば効果的か、考え抜かれているとしか言いようがない。ある時はロング、ある時はクロースアップ。ある時は忠実にカットを割り、ある時はカメラを動かして滑らかにつないだり反対に臨場感を出したりする。
『沈黙』を撮るために、構想28年。もともと神父を目指しており、『ミーン・ストリート』の頃からキリスト教のモチーフは通奏低音としてスコセッシ映画に流れていた。つまり、この映画は、スコセッシの並々ならぬ覚悟でとられたものであり、集大成ともいうべき映画ということ。「この映画を撮ればもう映画はとらない」と言ったという話も聞いたくらい(ディカプリオとデニーロで新作を撮るという話も別のところで聞いたが)。
要するに、この力作を前にすればただただ圧倒されるしかないということであり、その内容は重く痛々しい場面もあるが映画を観る喜びもまた満ちているということだ!
そういえば、この映画、アカデミー賞の作品賞にノミネートすらされなかった。意味わからん。
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