スマイリー

太陽のスマイリーのレビュー・感想・評価

太陽(2016年製作の映画)
3.5
入江悠監督最新作。結構驚いた。
というのも、画的な見せ方が上手いから。オープニングの拷問のシーン。カメラで下の方から見上げる形で捉える一連のシーン。あの長回しのレイプのシーンの見せ方。その後父親が殴るシーンは遠くから捉えるが、あの木の位置とか形とか含めハマっている。全体的にどのシーンを何処で撮るか、ちゃーんと考え抜かれている。正直、そんな監督だったっけと、良い意味で驚かされた。カメラマン近藤龍人を使うなら自然を撮らせたいということなのか、自然の撮り方も良かった。
現実への含意がないSFはつまらない。色々と印象に残るところはあったが、1番はあの鉄彦の叔父が言う「お前は洗脳されてんだ」というセリフ。最近よく聞くなあ。相手は悪い奴だと決めてかかると、陰謀論はとどまるところを知らなくなる。
悪いところもある。SFの設定として、それならこのシーンおかしくないかというような指摘はさておいて、とある負傷をした森繁を家に運んで以降の一連のシーン。複数のことが次々と起きるせいで、このこと今置き去りになってるけとどうなってるの?という状態になっていた。作り手も回収するのが難しかったのだろう、鉄彦の叔父は結局どうなったのかも含め、薄いキャラクターに落ち着いてしまったし、森繁がその後どうなったのかも省略という手に出てしまった。要するに詰め込みすぎ。
とは言いつつも、魅力が多い映画なので、マイナスをプラスが補ってあまりある。唐突なタイムリミット・サスペンスにはドキドキしたし、何より良かったのは、若者の描き方と若者への期待。このままじゃいけないのは分かってるし、このままで居たくない。何かしないと変わらないし、変えてみせるという、エネルギーたっぷりの若者。とりあえず旅に出たいという、安易な発想含めて私は支持したい。
ということで、一見の価値は間違いなくある。入江悠監督、進化していく過程をこれからも追っていきたい。
スマイリー

スマイリー