秋日和

皆さま、ごきげんようの秋日和のレビュー・感想・評価

皆さま、ごきげんよう(2015年製作の映画)
4.0
生きていれば必ず、名前も知らない誰かが自分の視界にフレームインして、そして直ぐ様フレームアウトする(ときにはローラースケートを履いていたりする)……と、まとめてしまえば綺麗に収まる気がする。けれど実際はもっと混沌としているし、一括りにすることは結構難しい。当然、シュールなんて言葉だけで片付けるには勿体ない。
ただ普通に暮らしているだけで、色んなものが剥がれ落ちたり、取り去られてしまったりする。ギロチンによって落とされた首、彼の被ったカツラ、そしてマフラー、風で飛ばされてしまう幾つもの帽子たち。それは恐らく、長年連れ添った男と女にも当てはまるのだろうし(そこら辺の男に荷物を持ってあげようか?と聞かれても簡単に取り去られてしまわない意思が同じ人間の中で働いている、というのも良いと思う)、あっさりと住処を奪われてしまうホームレスにだって言えることなんだと思う。「あっさり」と「離れる」、この二つがどこまでも守られていた、この世界のルールなのかもしれない。更にその「あっさり」加減は『群盗、第七章』の頃からイオセリアーニが持っているリズムでもあったりする。
一旦引き離したものを接着する術も当然のことながら監督は十分心得ていて、その瞬間にどうしても拍手を送りたくなってしまう。決して派手なことなんかしない。ただバイオリンを渡しただけなのに。ただマフラーをかけてあげただけなのに。不思議だ。運動云々だけでは落ち着かない魅力に溢れてる。
「なぜ青春時代の話をしているんだ?」「人生の一部だからよ」……素晴らしい。今回もイオセリアーニに乾杯乾杯。スリの出てくる映画にエテックスを出演させるなんて、粋なことするね。嬉しかったです。