カテリーナ

野火のカテリーナのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
5.0
日本の反戦映画の傑作

目を背けずに最後まで見れるか自信が無かったが
杞憂であった
片時も映像から目が離せない
聞き取りにくい台詞にも耳を傾け
どんなに悲惨な場面も溢さずに目を見開いて鑑賞した
それは、塚本晋也監督の「どうしても今撮りたかった」の熱意に圧倒
されたからだ
反戦映画として出来るだけ多くの人に
見て欲しいと心から願う

本線から逸れた兵隊たちがどうやって残された戦場で生き延びていたのか 食糧の無い飢えと死屍累々の惨状の中
どうやって理性を保ち どうやって
精神を破壊されて行ったか
戦争の成れの果てを
人間の本能の実態を
容赦無く眼前に曝け出す

銃撃された後人間はどうなるのか
文章で描写された悍ましさより強烈な
鮮血の生温さや臓物の匂いまでも
伝わってくる圧倒的な映像
それに耐えなければいけない
この光景を見届けなければいけない
その一心だった
しかし脳髄に
刻まれたその記憶は簡単には消えないだろう
わたしの記憶と共に戦争の地獄から奇跡の生還を果たした後
平和に包まれた暮らしの中でさえ
幻となっていまも尚その地獄は続くのだ

凄惨な光景と反比例し
レイテ島の青々と茂る鮮やかな色の森林の上の青い空
厚みのある入道雲に一瞬だけ緊張が緩む

見終わって時間が経っても
鉛を飲まされたような
この胸のつかえが直らない

今は後悔でいっぱい
劇場鑑賞必至映画だったのに
どうしても劇場で見る勇気が持てなかった

追記…………………………………………
この映画を鑑賞中
頭と目が乖離するという現象を
体験した【厳密には違うと思うけど】
頭では「見るな」と命令してるのに
目が画面に貼り付いて離れない
恐ろしい体験だった(゚Д゚)
まだ、気持ち悪い恐るべきカニバリズム
カテリーナ

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