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クリムゾン・ピークのRenのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
3.5
好きか嫌いかで言えば好き。だけど、もっと見たことのない何かを期待してしまった身としては、あくまでジャンル映画を満点に近い見せ方で見せるという趣の今作に若干の食い足りなさがあった、というのが本音。

それでも刺激的でかつ目にも美しい美術・映像は100点。
勝手に館を舞台にした『ホーンテッドマンション』のようなほぼワンシチュエーションのゴシックホラーだと思っていたが、前半40〜50分がそのための前フリ(館に行くのはそれ以降)というバランスだった。これは興味持てないかもしれないぞと微妙な心持ちで観つつ、やはり圧倒的に画面映えする20世紀初頭の空気漂うゴシックロマンスのあの感じ+神経を逆撫でするゴア描写のおかげで飽きさせないのは流石だと思う。
これを観ると、『シェイプ・オブ・ウォーター』『ナイトメア・アリー』が今作の延長戦上として作られていることがなんとなく理解できて面白かった。

反面、館に到着してからラスト30分までは展開的に冗長な印象も受けた。クリーチャーはハッキリ映るためゾクッとする恐怖も控えめ、今作の霊は恐怖というより悔恨を動機とした存在であることも早々に察せられてしまうため、どうせ裏に何かあるなら早く見せてよーと野暮なことを考えてしまう。助走を助走として楽しめず、何となく暇な感じに。

それ以外は全部良かった。ゴシックホラーがゴシックホラーのまま終わるわけはなく、痛く仕留める演出も、某人の狂気演技も、圧巻の館セットの中で巻き起こるからこそ映える。

あらゆる「赤」に画面が染められていくのもまた視覚的快楽だ。映画で雪が出てきたらそれはすべからく赤く染まるべき(暴論)。ただこれも、前半の緑を始めとする絢爛な色彩からガラッと一転しガンガンに彩度を落としていくからこそ美しく感じる点もあるはずで、抜かりのない画面設計に天晴。

その他、
○ ホラー演出は音のジャンプスケアが数箇所あるだけなので苦手でも観られると思います。そのぶん、「廊下の向こうに誰かいる気がする....」という「家」の恐怖はしっかり感じられて◎。
○ デルトロ作品は今作で5作目の鑑賞。人間と人外が疎通・交流・邂逅した瞬間からドラマが狂っていく、という共通項こそあれど『パシフィック・リム』の浮き具合がすごい。これだけ作風違いすぎる。
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