まっつん

ブルー・リベンジのまっつんのレビュー・感想・評価

ブルー・リベンジ(2013年製作の映画)
3.7
「グリーンルーム」のジェレミーソルニエが描く復讐劇。冒頭の淡々としたテンポがグッと観るものを掴む良作でした。

まず本作の主人公は両親が殺された後、ホームレスとなり各地を転々としているらしい。そんな折に両親を殺した犯人が釈放されたとの知らせが。彼は復讐をする為にオンボロの車ひとつで走り出す.....がしかし彼は復讐劇の主人公になるような器では全く無いわけです。身の丈に合わない復讐を決意したばっかりにことごとく作戦は失敗していくのです。特に相手の車をナイフで刺してパンクさせようとするが失敗→手を負傷→挙げ句の果てに自分の車の鍵は殺した相手の所に落として来たので仕方なしにパンクした車で逃走という一連の流れの情けなさたるや。やっている事だけ追っていくとあまりの間抜けさにコメディのようにすら思えて来てしまいますが、主人公の彼の「本当になんの取り柄も無さそうな雰囲気」が笑わせてくれないんですよね。

さまざまなエンタメ作品で「復讐は意味がない」という事は何度も描かれてきましたが、本作の復讐劇はそもそも最初から意味がないわけです。なぜなら本当に復讐すべき相手はもう既にいないから。だから本作は全編に渡って話の噛み合わない感覚が付きまとっています。しかし始まってしまった復讐の不可逆性は彼を逃してはくれない訳です。それが虚しい試みであることに気づいたときには時すでに遅し。引き返す事は絶対に不可能な地点まで来てしまっていました。一種、意思とは関係なく連鎖してしまう恐ろしさがあります。そして復讐の何が虚しいって「どこかで何らかの落とし前をつけない限り全員が死ぬまで終わらない」ということです。

暴力描写に関してはバッチリだったと思います。グリーンルームでも発揮されていたアナログな人体破壊描写への拘りが堪能できます。