ベルサイユ製麺

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

2.6
今作に於いても、母と子の関係性という主題は揺らがず、スパイス程度のSF的設定は寧ろ現実の問題を詳らかに提示してみせます。他者と緩く繋がり、個人の問題を全体化することによって得られる気休め。それと引き換えに先送りされる解決は、より深刻化・タコツボ化し、気付けばデヴァイスの数だけ“深刻な、個人の問題”が育まれてしまうという皮肉。
アスペクト比1:1で描かれる、母と青年の踠き・喘ぎ、圧縮された感情が一瞬見せる匂い立つような生の喜びは、しかしやはりデヴァイス越しの、無限にあるコンテンツの一つに過ぎない、と。…


…ということで、オススメはグザヴィエ・ドラン版の『マミー』です。
今作、アレックス・カーツマン版の『マミー』は、えーと。
出来れば評判の良くない作品も積極的に楽しんでいきたいと常々思ってはいるのですが、コレは遺憾。遺憾よ。
この作品の制作費と占有したスクリーン数で、何本の優れた作品が世に送り出せただろう?なんて、当たり前過ぎて普段意識していないような事を考えてしまいましたね。
お話が頭に入ってこない…。何処で何が起こっているのか分かってあげられない。演技や特殊効果、劇伴など、映画の外堀を埋める個々の要素はそれ程悪くないのに、それらを駆使して描くべき魂の様な物が搭載されていないかのようでした。言わば“誰も責任を負う気がない”様な作りで、監督を責めるのは簡単ですけど、こんな作品が生まれた背景にはもっと根深い原因がありそうな気もします…。
ごく表面的な事を言えば、トム・クルーズはいつも通りの頑張りですが、元々驚いたような顔つきのトムとホラー映画はあんまり相性が良くないかもしれません。
個人的にはもっとバカっぽくてB級感全開のおマヌケモンスター活劇が観たいです。基調コメディでシリーズ化。で、ユニバース展開してくれれば、コレは夢の実写版怪物くんが観られるのでは⁈スティーブ・ブシェミのドラキュラ!ジャック・ブラックの狼男!クリストファー・ウォーケンのフランケン!ジェニファー・ローレンスの怪子ちゃん‼︎み、観たいよ…。製作陣は今からでも方向転換すべきです!(この企画もう終わってます?)