むさじー

チャップリンからの贈りもののむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

<名もなく貧しい人たちにエールを送る人情話>

1978年に起こった実話が元ネタになっている。
“放浪の紳士”チャップリンは移民で貧しい我々の味方、だからこんな罪ある行為も許してくれるはず、という発想が犯行動機になっている。
「貧しく恵まれない人々の物語を描く」ことで、稀代の大金持ちになったチャップリンだが、「貧しい者をネタに大金持ちになった」チャップリンへの皮肉とも取れる(チャップリンの子息も映画に出演していて、チャップリン家の寛大な処置が描かれるので、もちろん皮肉ばかりではないが)。
裁判の席で弁護士は言う「彼らは(チャップリンと違って)無能で名声もなく歴史に残らない。そして貧しい」。
そんな社会から落ちこぼれた人たちにエールが送られ、これが作り手のメッセージになっている。
英語のタイトルは「The Price of Fame」で有名税のような意味。
全編「ライムライト」を始めとするチャップリンへのオマージュが見られるが、その中に辛辣な社会批評を垣間見せる。
映画の前半はゆる過ぎでやや眠くなるものの、そのうち、スイスの美しい風景の中で繰り広げられる人情話に引き込まれていく。
それは、コメディでも単なるエンタメ作品でもなく、強いて言えばヒューマンドラマ(人情話)と言えそうな、地味でジンワリくるフランス映画だった。
それにしても、エンドロールの後、湖畔のチャップリン像が何者かの手で盗まれる映像が流れるが、これは起こりそうな“二匹目のドジョウ”を意味しているのか。わざわざ入れた意図が読めない。
むさじー

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