ろ

キングスマンのろのレビュー・感想・評価

キングスマン(2015年製作の映画)
5.0

「“生まれの貧しさでは人生は決まらない”と言いたい。学ぶ意欲さえあれば変われるんだ。」
「“マイ・フェア・レディ”みたいに?」

も~~すっごくおもしろい!
娯楽アクションかと思いきや、権力・階級批判がすごい!
こういう尖った思想の映画が大好物の私には、もうたまりませんでした!

政府や政策の影響を受けない新時代の騎士(独立諜報機関)・キングスマン。
仲間が一人殺されたことから、キングスマンの試験が実施される。
そこに招かれた青年エグジー。
彼の父もかつてキングスマンだった。

浸水した部屋からの脱出、暗闇の射撃訓練。
試されるのは知能と精神力。
次々と試験が行われる中、世界各地では政治家や富豪が行方不明になっていて・・・


人間は地球の病原体だ。
人間の数を減らせば、地球温暖化や資源問題が解決する。
そこで生み出されたのがこのSIMカード。
インターネットやWi-Fiが使い放題になるこのカードは世界中にばらまかれ、人々は我先にと手に入れる。
だがその実態は、電波を操り人間に殺し合いをさせる恐怖のカードだった。


考えに共感できる悪役というのは、とても魅力的だと思う。
聖書にもあるように、人間はみな罪人だ。
それは例えば何かを盗んだとか、誰かを殺したとか、そういうことじゃない。
そんなことしなくても存在自体が罪だと思っている、自分も含めて。
だからと言って、ヴァレンタインが用意した“ノアの箱舟”に乗りたいかと聞かれるとそれは違う。
彼らはただ人殺しゲームを楽しんでいる。
地球を救うというのは勝手な口実だ。
そんな考えに賛同した支配者ばかりが生き残る世界、それはもはや人間として死んだも同然なのだ。
だからこそ、彼らの脳みそが花火となって散るラストシーンはとても深い。
尊厳を失った支配者は死に、生き残った者には未来がある。


自分たちを破滅させるカードに列をなす人々は、知らないうちに人肉を食らっていた「ソイレント・グリーン」みたいに恐ろしいし、自我を失い殺し合う人々はまるでゾンビだ。
けれど、この世紀末は突然終わり、また元の日常が戻ってくる。
まるで、映画を観終わったときのわたしたちのように。


「ヘミングウェイは言った。“他人より優れた者でなく、過去の自身より優れた者が気高い”と。」
ろ