Stroszek

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックスのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

2017年。

姉のガモーラに訓練で負けるたびに、養父サノスによって身体のパーツを替えられていったというネビュラの壮絶な過去に驚愕した。妹の姿が毎週変わっていくのに気づかなかったガモーラはどうかと思ったが、本当に「殺るか殺られるか」の子供時代だったのだろう。最後にネビュラはその取り替えられた腕で姉を救う。彼女が父殺しを行うスピンオフ作品が観たいと思った。

ヨンドゥー・ウドンタの台詞、"He may have been your father, Quill, but he wasn't your daddy"には泣かされた。ジェイムズ・ガンの映画には「これだけのことをしといて求めたのはそれなの?!」という行動と感情の落差みたいなのが描かれる(例: 『スーパー!』で大殺戮のあと子ウサギを飼う主人公)。おそらくヨンドゥーの行動規範は「クールかそうじゃないか」で、ピーターに"cool dad"と呼ばれたがっていた。クールを求めるほどアンクールなことはないから口に出さなかったが、「メリー・ポピンズはクールか?」という台詞で、彼の人格のまったく新しい側面をピーターに見せる。その際にピーターが見せた理解の表情が素晴らしい。「知ってると思い込んでいた近しい者の新しい側面を知るが、気づいたことを黙っておく」ときの演出がガン監督は繊細。

マンティスのエレパス(感情を読む)能力や、ヨンドゥーの「俺は矢を飛ばすとき考えていない。感じてるんだ」というような台詞から、感情が重視されていることが分かる。

ピーターの父エゴは、正にエゴの拡大のためにピーターの母まで殺していた。リバー・リリィという他者への愛情よりも、自我だけのために生きることを選んだのだ。彼は「神にならなくていいのか。平凡なままでいいのか?」とピーターに聞く。

「なぜダメなんだ?」とピーターが答える。

ピーターが母やヨンドゥーと過ごした過去のフラッシュバックがごく短い時間だけ流れる。その瞬間に感情が凝縮されている。この感情の記憶があったからこそ、「なぜ平凡でダメなんだ?」と即答できたのだろう。

エゴがピーターにエネルギーの作り方を教える場面(リアルタイム)、ガモーラとネビュラの子供時代の組手(台詞のみ)、ラクーンがグルートに爆弾起動方法を教える場面(リアルタイム)、ヨンドゥーがピーターに施した射撃訓練(フラッシュバック)と、様々な育成の形態が描写されている。

136分の映画でピーターとエゴ、ガモーラとネビュラ、ヨンドゥーとスタカー、ドラックスとマンティス、ラクーンとヨンドゥーと、そしてヨンドゥーとピーターと、ペアのやり取りで物語が展開していくので、登場人物が多いにもかかわらず筋が散漫になっていない。

グルートが可愛すぎるからラヴェジャーズがお洋服を着せてあげると決める場面がとんでもなくキュート。

アンプをつないだり、育児によって人々をつないだりしていたグルートが、エゴの自我をぶち壊す爆弾を起動させる演出は最高だ。

それにしても、ピーターの理想の父親役でディヴィッド・ハッセルホフは出てきたのに、Vol. 1で言及されていたケビン・ベーコンが結局出演しなかったのは残念。Vol. 3には出てくるだろうか。

追記: ヨンドゥーの部下がピーターに300曲入ったZuneを渡す場面を観たら、なぜ『リミックス』という邦題が改悪だったのか分かる。ヨンドゥーという育ての父がそれをくれるから、ジェイムズ・ガン監督は『Vol. 2』という副題にしたのだろうに。
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