藤原直樹

スコッターズ ~不法占拠者~の藤原直樹のレビュー・感想・評価

2.8
映像の質感やアイデアは面白い。
だけどなんだろうな...全体的な映像演出や構図がまるでミュージックビデオのようでどうにも深みのない浅ーいドラマが展開される。

主人公はジョナスとケリーの若いホームレス2人組。
毎日ゴミを漁って、盗みを繰り返し、クスリや酒に逃げて、浜辺で夜を明かす。
まずこの2人のバックボーンがほとんど掘り下げられないから(中盤と後半でちょっぴり説明はあるが)感情移入しづらい。
この2人がとある金持ちの豪邸へ空き巣に入る。
そこで、ブランド物の服を着て、高い酒を飲み、高級車を乗り回す。
一時の間、セレブ気分を味わう彼らだけどジョナスとケリーの間にある価値観の相違が浮き彫りになる。
セレブな生活に浮かれまくるジョナスはともかくとして、ケリーは少なからず罪悪感を感じており、豪邸のテレビでその住人のホームビデオを眺めながら微笑んだり涙ぐんだり...深くは描写されないが彼女がホームレスになった理由も後々わかるのでここら辺の感傷的な描写にも納得がいく。
ただ、本当の住人が突然帰宅したことから物語は急展開を見せる。。。

なんだろう、、、中途半端なのが一番よくないなとつくづく思う。
クライムサスペンスにしたかったのか、ロマンス映画にしたかったのか、はたまた主人公の成長するヒューマンドラマにしたかったのか...尺の割に詰め込みすぎてこうなったんだと思われる。
クライムサスペンスとしてはイマイチ緊張感に欠けるし、ロマンス映画としても薄っぺらさが鼻につく、ヒューマンドラマとしては最悪で登場人物の掘り下げが浅すぎてちっとも響かない。
たしかに画作りは巧いんだが、いちいちわざとらしいカットを挿入するから胡散臭さまで感じてくる。
ラストはもう...なんて都合のいい話なんだと呆れる。
だが、この映画の一番の欠点はずばり配役だ。
主人公ケリーを演じたガブリエラ・ワイルドの表情が乏しすぎる...これならそこら辺の喋るロボットにやらせた方が表情豊かじゃないのか?
「アメリカン・グラフィティ」のリチャード・ドレイファスも存在感がかなり薄い。
脚本の穴を埋め、配役を再考し、余計なカットを盛り込まなければかなり楽しめたかもしれない。
それともうひとつ大きな欠点としては全編に流れる劇中曲の煩わしさだ。
いかにもミュージックビデオ風な使い方が鼻につくし、垂れ流すもんだから全体的にシーンごとのメリハリが薄くなる。
ここぞって時に巧く使って緩急を付けた方がよいのでは?
藤原直樹

藤原直樹