未島夏

世界から猫が消えたならの未島夏のレビュー・感想・評価

世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)
4.1
傑作。
アプローチは違うが、和製「素晴らしき哉、人生!」。

大切な人々との思い出は非常に断片的に描かれていくが、どれも強く、普遍的に観客の涙腺を揺らしていく。

この映画は「物語という媒体の本質」にどれだけ観客が寄り添えるかで解釈が一変する作品。
皮膚感覚の話になるので中々上手く表現出来ないが、間違いなく言えるのは多少整合性が取れていなくとも、この映画は目指すべき主張への本質をしっかりと一貫したということ。

不可思議な時間軸の中で普遍的なエピソードが静かに進行する事で、独特のリアリズムを生み出しているのがこの映画の魅力だが、セリフ自体は直接的なので辻褄ばかり気にしてこの特有のリアリズムが理解出来ず感情移入出来ないと、主張が浮ついて聞こえてしまう。

なお、映画への知識が深くその知識に胡座をかいている様な観客には、決して相容れない映画だろう。

公開初日、エンドロールに立ち上がる観客は少なかった。
多くの観客にこの映画の芯が伝わる事を願う。
未島夏

未島夏