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デッドプールののらのレビュー・感想・評価

デッドプール(2016年製作の映画)
4.0
比較的王道のヒーローが揃うマーベル・コミックの中でも、かなり異色のヒーローであるデッドプールを主役にした映画。

デッドプール自体はウルヴァリンの誕生を描いた X-MEN: ZERO で登場しているが、あまりに評判が悪かったため無かった事にされている。しかし本作のデッドプールは X-MEN: ZERO と同じライアン・レイノルズが演じるという珍しい経緯の映画になっている。

この映画が異質な事はオープニング・タイトルからも明らかだ。監督やプロデューサーにメインキャストの名前の所に悪口が書かれている。さらにファーストシーンはデッドプールがタクシーに乗ってる所から始まる。

一般的にアメコミ映画だとキャプテン・アメリカでもアイアンマンでも、主人公が何故スーパーヒーローになったのかの経緯から始まるのが定番だが、本作はそんな事お構い無しに展開する。

そして襲撃シーンが兎に角凄く、悪党は死にまくるし巻き添えで一般人死にまくっているだろという大立ち回りで、いきなりクライマックス?というハイテンションなアクションが繰り広げられるが、ここで突然何で主人公がデッドプールになったのか、そしてどうして襲撃する必要があったのかの回想が始まる。

凄惨な殺戮劇からラブコメディに変わるというジェットコースターぶりだが。このラブコメパートが非常に良く出来ている。特に2分近く続くヒロインとのセックスシーンの BGM がニール・セダカのカレンダーガールで、歌詞の内容に合った四季折々のセックスを演じるという頭のおかしさも良い。

人体実験の結果デッドプールになった主人公の同居人の盲目の老婆がイケアの家具を組み立ててる時に、IKEAのあの製品に比べたらマシだと言うのも、ライアン・レイノルズが GQ の企画でIKEAのベビーベッドを組み立てることが出来なかった事をネタにしていたり、この辺りのギャグのセンスが抜群で兎に角下らなくて良い。それでいて主人公とヒロインの互いに対する愛情が伝わってきて、あの野郎許せねぇーと主人公と同じ気持になれる。

実の所コメディパートを考えると R 指定 (非 R 指定バージョンも存在す) になるレベルの暴力描写を入れなくても十分に楽しめる映画だと思う反面、それが主人公の性格のアクセントなっているのも事実だ。またこれだけの下ネタを入れるとどのみち R 指定は避けられないので仕方ない部分はある…。

また世界観の説明が若干不親切で、基本的に X-MEN の世界での話というのを知っている前提で語られる。そのため X-MEN やアメコミ映画に疎い人には世界観が飲み込み難いのと、結構な数のギャグの意味が分からない可能性は高い。

とはいえラブコメとして非常に高い完成度を誇っている。アンチ・ヒーロー的なキャラクターに見えて、実はここ数年のアメコミ映画の中でもトップクラスの王道のヒーロー映画になっている。また映像だけでなくシナリオの部分でも非常に高いに水準の映画に仕上がっているといえるだろう。
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