もるがな

セッションのもるがなのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.3
ファッキンテンポ! 狂気の世界に身を委ねなければ見えない景色がある。突然冷水をぶっかけられるかのような全編に漂う緊張感が素晴らしい!音楽に合わせたカットにシンプルな説明で、あとは狂人の演奏のみで物語は進んでいく。

才能あふれるナイーブな青年と鬼教官の熱血スポ根ものだとか、「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」から厳しく当たっているんだろうとか、そんなヌルいノリで見ていたらいきなり椅子が飛んでくるぞ!見る側が想定する話の着地点など、この映画からすれば安全地帯に過ぎない。音楽で狂った二人はそんなものを置き去りにして狂気の彼方へと旅立っていくのだ!

認め合うのも、罵り合うのも、その全てを誇張表現抜きで音楽を通じてやるとこうなる。音楽がコミュニーケーションという生易しい話ではなく、音楽でプリミティブな感情をぶつけあっているのだ。

怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。 音楽は人を容易く怪物へと変えてしまう……。

つまるところ、音楽とは狂気であり、これは狂気の果ての物語である。教育的にどうこうとか、体罰の是非とか、これはそういう話じゃないんですよ。逆に言えばたやすく狂気へと落ち込むからこそ、こういうやり方が禁止されていると言っても過言ではない。狂気に肯定も否定もないのです。
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