カリカリ亭ガリガリ

セッションのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
5.0
「劇中で描かれる音楽観・音楽教育観に関しては全く同意を示せないし、音楽及びジャズを愛する端くれとしても侮辱されているような屈辱すら感じる。そして、展開もショットの構成も"漫画的"でしかなく、映画の文法なるものには決して沿っていない。音楽映画としては評価に値しないと感じる。

……という能書きを吹き飛ばす程の、執拗なまでのエネルギーがみなぎっているので脱帽せざるを得ない。この執拗性がデイミアン・チャゼルの作家性なのだと思われるし、次作『ラ・ラ・ランド』においてその作家性は確立され、それはつまり"夢を見ていた者たちが夢になるまで"の過程に注ぐ情熱ゆえなのだと感じる。
本質的な結論としてはかなーり歪んだ映画だと思うけれど、スポ根映画としては満点だと思います。もう一度リングに上がる男は、いつだって我々を燃えさせてくれるので。
加えて編集が素晴らしい。常にワンテンポ早いカット繋ぎによって観客の緊張感は保たれ続け、終いにはあのラスト9分19秒。リアリズムに徹しなかったのが吉と出た。
あとは親戚との夕食シーンと彼女を振るシーンは、夢追い人には泣けて仕方ない苦痛がありました。
……にしても邦題が酷すぎるのでは」