けんたろう

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのけんたろうのレビュー・感想・評価

-
マイハウス思想を打ち砕くマイホオム思想。


桁違ひの迫力を誇る、広大で色鮮やかなる世界に終始圧倒せらる。ライオンキングやバアフバリを想起せしむる、壮大なる音楽も頗る好い。非常に──然し前作が偉大すぎた。結局遣りたることは、己れ自身の二番煎じである。
加へて公開前から話題と成つてゐたハイ・フレエム・レエト(HFR)である。成るほど画のタツチが、より詳らかには見ゆ。然し此れには何んだか、家電量販店に置かれたる4Kテレビのデモ映像みた印象を受く。詰まるところ大自然の様は実際に在りさうな観を呈し、前作に有つた神秘的なる魅力を半減せしめたり。要するに、謂はゆる ”リアリテイ” とやらが寧ろ徒と成つてをる。

テエマも亦た大へん心揺さぶるものである。父と息子、兄と弟、母と子らの、覚悟と愛情と尊敬心。不器用なる遣り取りと、其処に揺蕩ふ引け目や疎外感。或いは新参者の宿命。然うして乗り越えし先に在る友情。果ては因縁の戦ひと、愛情への敗北。
然し此れ亦た前作が偉大すぎた。成るほど物語りが詰まらない訳けでは決してない。雄大なる映像美も相俟つて、引き込まれもする。何んなら、成熟したジエイク(サム・ワアシントン)の格好よき姿には魅力を感ずるほど。然し前作から大幅にスケエルダウンした印象は拭へない。

更に、前作が人類とナヴイの邂逅を丁寧に描いてゐた分、本作の其れ──即ち大佐とパンドラ、及び森のナヴイと海のナヴイの邂逅である──は、やゝ性急に感ず。トントン拍子が過ぎて、一貫性が無いのにも、ひとつ嫌悪感を催しき。

むろん圧巻の映像美に因りて、中弛みなどは一切せない。三時間超えなれども、体感では短くさへ感ぜらる。然し、其の刹那の感が満足の感に昇華せらるゝことは殆ど無し。寧ろ物足りなさゝへ覚ゆる始末である。
面白かつた。けれども観たあとに残るのは、──無意識に目を酷使してゐた為めかしら──たゞ疲労ばかりである。